「飲みすぎはよくない」のは誰でも分かっている。だが、「分かっているけど、やめられない」のが酒のみの心理。アルコール依存症は、現代人にとってあまりにも身近で切実な課題だ。
アルコール依存症患者の治療については国立療養所久里浜病院が有名だが、同病院にかかわってきた専門医が書いた『酒乱になる人、ならない人』(眞先敏弘著、新潮新書)、『酒飲みの心理学』(中村希明著、ブルーバックス)、『アルコール問答』(なだいなだ著、岩波新書)はいずれも説得力がある。3冊とも「ひとたびアルコール依存症になれば、治す手立ては禁酒しかない」を前提に、酒のもたらす危険や酒とのつきあい方を考えさせる内容となっている。
『酒乱になる人、ならない人』はアルコールが細胞や脳にもたらす「酔い」や「酒乱」のメカニズムを最新の遺伝子研究も含めて科学的に解説する。著者は、日本人の6人に1人は「酒乱」遺伝子をもっているとした上で、アルコールが脳を含め身体に与える毒性をわかりやすく伝える。
『酒飲みの心理学』は、酒の害を説明した上で、西郷隆盛、南方熊楠など古今東西の大酒豪の、成功と失敗の実例を示し、「良い酒飲み」への道を考える。
『アルコール問答』は著者と患者の対話という形を通じて、アルコール依存症がどのような病気で、どう治療するのか、はたまた治療できるのかを説く。対話形式なので、読みやすく、かつ、この病気の社会的・文化的背景が浮かび上がり、現代社会に生きる人間の人生ドラマを垣間見ることができる。
『酒と健康』(高須俊明著、岩波新書)は、神経内科学の研究と診療に携わってきた医師の手による。酒の消費の現状、酒の薬理、アルコール依存、神経と内臓への影響を紹介するとともに、酒を人生の友にするための知恵を提示する。
一方、『依存症』(信田さよ子著、文春新書)は、「依存症」をキーワードに家族、ひいては今の社会の問題解明に挑む。アルコール依存症の夫に悩みながら、それを許し、助長してしまう「共依存」、アルコール依存症の親のもとで育って成人し、自らの存在意義に悩むアダルト・チルドレンなどの実例も豊富に紹介され興味深い。
ところで、いったい酒のない暮らしは可能なのか? 『禁酒法:「酒のない社会」の実験』(岡本勝著、講談社現代新書)は20世紀初頭にアメリカで施行された禁酒法を取り上げ、その背景や効果などを解明する。
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