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アンチ健康
健康ブームが過熱するあまり、「健康のためなら死んでもいい」とすらいいかねない異常な事態が起きている。いったい何のための健康なのか。「健康とは何か」「どういう生き方がいいのか」を根底から探る。
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読書ガイド
「現代人が何かの行為の動機として理解できるのは、金銭、快楽、健康の3つである」とは、アメリカの作家・評論家のスーザン・ソンタグの言葉である。なるほど、金銭に恵まれ快楽を充分に享受できる現代の日本人の間では、健康でいたいという欲望が急速に高まり、そのため本末転倒な行動を取る人さえ出てきた。
 この欲望の世界に、産業もメディアもなだれ込んでいる。テレビ、新聞、雑誌で、健康に関する情報を目にしない日はない。しかし人々が持つ「健康」という認識は正しいものだろうか?
『「健康」という病』(米山公啓著、集英社新書)の著者は、聖マリアンナ医科大学第二内科助教授時代に新薬開発に携わったこともある。著者が明かすには、一般内科で本当に必要な薬はわずか70品目程度だという。世界保健機関(WHO)は、全科を通じて薬は270種類で充分と判断しているが、現在の日本で医薬品として認められているのはなんと1万1000種類にも及ぶ。なぜ、そんなにも多くの薬が跋扈するのか? 数多くの新薬開発に携わったある高名な医師は、こう説明するそうだ。「副作用がなく、効果もないから、薬は安心して使えるんです」。こうした「効かない薬」を、健康という欲望に取り憑かれた日本人はありがたく服用している--。この状態こそ病気といわずしてなんといおうか。
 かつては日本でも、健康を気にしない時代があった。死もタブーではなかった。『健康病:健康社会はわれわれを不幸にする』(上杉正幸著、新書y)は、そうした時代の人々と現代人とでどちらが幸せか疑問を呈する。現在、政府が推進する「健康日本21」運動は、確かに生活習慣病のリスクを下げるために有効ではある。しかし著者は、その運動に共鳴し健康な生活を営もうとすれば、日本人の行動様式は画一化し、クローン化していくだけだと嘆く。
 信濃毎日新聞編集委員が、医師、医事評論家ら7人の専門家にインタビューする『健康ブームを問う』(飯島裕一編著、岩波新書)。薬、飽食、睡眠など7分野の専門家たちの言葉からは、健康そのものが目的化している異常な状況が浮かび上がってくる。
 ところで現在の健康ブームは、食べ物情報と密接に結びついている。テレビで「○○はいい」という情報が流れれば、すぐに主婦たちは買い漁る。食べ物や栄養素が健康に与える影響を過大に評価することをフードファディズムと呼ぶ。果たして巷間流れている食情報は、ファディズムに過ぎないのではないか。『「食べもの情報」ウソ・ホント:氾濫する情報を正しく読み取る』『「食べもの神話」の落とし穴:巷にはびこるフードファディズム』(共に高橋久仁子著、ブルーバックス)を読むと、良いとされる食品、悪いとされる食品(例えば砂糖、炭酸飲料、化学調味料)について、いかに大きな偏見を持っていたか考えさせられる。
 健康情報の多くが医学的裏付けに乏しいと斬り捨て、信頼できる最新医学論文の中から興味深いものを紹介するのが、『食べ物とがん予防:健康情報をどう読むか』(坪野吉孝著、文春新書)。1日ワイン1杯程度の飲酒で乳がんリスクが10%上昇する、ビタミンE剤は心筋梗塞や脳卒中にかかるリスクを低減させない、といった興味深い研究成果56例(がん予防に限らない)を知ることができる。
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