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脳の科学
人の認識のメカニズム、記憶を再生する、短期記憶と長期記憶、脳のしくみなど脳科学の最先端について。
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読書ガイド
 ゲーテは「人間が人間であるゆえんというのは、気高さであり、情け深さである」といったが、ノーベル賞(生理学医学賞受賞)の利根川進氏は、人間が人間であるゆえんは脳のはたらきにある、人間にとって最も重要なものは脳である、と考えている。「脳死は人の死といえるか」ということが議論されたように、脳が死んだ人間は、もはや人間とはいえないという見解もある。脳科学の分野は近年、脳内の構造を生きたままとらえることができるPET(陽電子放射断層撮影法)とMRI(核磁気共鳴画像法)という技術により驚異的に研究が進んでいる。脳科学はどこまで人の脳を明らかにしたのか。
『脳と記憶の謎』(山元大輔著、講談社現代新書)は二つの焦点がある。一つは漠然と「記憶」の名の下に一括され、わかりきったこととしてあつかわれている現象を科学的にとらえて、記憶の実像に迫ること。記憶障害を比較検討して、どこの部分の機能障害がどういった現象を引き起こすのか、たとえばパーキンソン病やアルツハイマーは治療の可能性があるのかどうなのか、などが紹介される。K・ブロードマンがつくった「ヒトの脳地図」は脳に52番までの番号をふり、脳を総背番号制で整理しているが、これによると記憶のシステムはいかに複雑で、精密にできているかが理解できる。
 二つ目は記憶の物質的起源(脳細胞のなかで活躍する遺伝子物質=タンパク質やそれを作り出すDNAの動き)を理解することや、記憶の歴史的起源に迫ること。本書ではいままで独立してばらばらに研究されていた記憶の解明にむけて、臨床医学(記憶障害)、実験心理学(記憶の座)、生理学(記憶の細胞メカニズム)、基礎医学(遺伝子研究)が共同で取り組み連携する様子が克明に明かされる。
『遺伝子の神秘男の脳・女の脳』(山元大輔著、講談社+α新書)は性行動をコントロールする遺伝子の実態に迫る。生物にとっては自己の遺伝子(DNA)を次世代に残すことが至上命令である。性行為はただそのためにある。淘汰されないためには性のテクニックがうまくなるしかない。ヒトの性行為にみられる姿も進化過程で培われてきた枠組みのなかでとらえられる。性行動をあやつる脳の仕組み、性行動をコントロールする遺伝子とは何か、をキイロショウジョウバエの性行動観察から始め、人間の脳とセックスの関係まで、ユーモアたっぷりに解説する。
『脳を育てる』(高木貞敬著、岩波新書)は主に脳の働きと男女の脳の違いに焦点をあてている。左脳の働きは言語的、観念的、論理的、分析的、時間的、算術的・コンピュータ的といわれ、右脳の働きは音楽的、絵画的、直感的、総合的・全体的、幾何学的・空間的と俗にいわれているが、男女ではこの働きにも若干の違いがある。また欧米人と日本人にもかなりの違いがある。本書はその違いを楽しめ、とすすめる。脳は鍛えれば鍛えるほどよくなっていく。だから総合的に絶えず頭を働かせていけば年をとっても悲観することはなにもないと記す。
『私の脳科学講義』(利根川進著、岩波新書)はノーベル賞を受賞した著者が、今まで自分が歩んできた道と現在研究中である、脳にためた記憶を再生するプロセスについて詳述。脳科学の最先端とは何か、仕事とは何か、大局的戦略的に物事を考えるとはどういうことか、を率直に語っていて興味深い。
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