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漢詩
マンガ漢詩から知る杜甫・李白、漢詩名句の楽しみ方、漢詩の詩跡など、漢詩の豊かな味わい、広くて深い漢詩の魅力とは何かを探る。
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読書ガイド
 漢詩が静かなブームだ。近年の漢字文化の見直しが背景にあるといわれる。滋味あふれる詩情、簡潔なリズム、端麗な響きを持つ漢詩の豊かな抒情の世界は、人を惹きつけてやまない魅力がある。中国三千年の悠久の歴史のなかから生まれた漢詩は、日本では平安の時代から短歌、俳句とともに日本人の詩心を育んできた貴重な文学作品である。
 友情、別離、郷愁、逆境、酒、戦乱などを詠う漢詩には、詩人の真情が凝縮されていて胸を打つ。人口に膾炙した杜甫の「国破れて山河在り」(『春望』)や水墨画をイメージさせる柳宗元の「独り寒江の雪に釣る」(『江雪』)など、どれもが人生を感じ、想像力をかき立てる名句である。
『漢詩:美の在りか』(松浦友久著、岩波新書)は、詩の紹介から解説までがバランスのとれた構成で、入門書として適している。本書は5章からなり、陶淵明、李白、杜甫、白居易という漢詩の典型を創出した4詩人を取り上げた「詩人と詩境」、友情、戦乱、懐古、飲酒の4テーマに絞って名作を解説した「主題とそのイメージ」、名詩のふるさとを紹介した「詩跡の旅」。さらに、絶句、律詩といった漢詩独特の様式を説明する「詩型とその個性」の章では、鑑賞の目を開かせてくれる。また、短歌・俳句と比較した「『文語自由詩』としての訓読漢詩」の章は、類書にはない視点からの言及で、本書の白眉といえる。ここで著者は「訓読漢詩(自由詩)と短歌・俳句(定型詩)とが、ーとりわけその相補性という点でーきわめて効果的に作用した」と書いている。だからこそ、漢詩は和歌や俳句と共通の「日本語詩歌」として生命力を保ってきたのであろう。
 これとは対照的に、表現様式などにはあまりこだわらず名詩を賞味したいと思う読者に向いているのは『漢詩をたのしむ』(林田愼之助著、講談社現代新書)と『漢詩の名句・名吟』(村上哲見著、講談社現代新書)である。『漢詩をたのしむ』は、「乱」、「別れ」、「辺塞」、「自然」など10の主題に分けて、杜甫、王維、杜牧、孟浩然など65人の詩人と作品を紹介、その時代背景、詩人の人物像に焦点をあてているのが特色。皇帝に諌言したため八千里の果てに左遷された中唐の文豪・韓愈がのこした「好し吾が骨を収めよ 瘴江の辺に」は、逆境にあったというその背景を知ることで、いかに壮絶な詩であるかが理解できる。
『漢詩の名句・名吟』は、「李白と酒」「蘇州詩話」「旅愁・シルクロード」などでくくり、名詩の数々を紹介している。詩句ごとに名所や時代状況を挿入しながら、平易な文章で物語風にまとめている。また、『朗読で味わう漢詩』(石川忠久著、プレイブックスインテリジェンス)は、「もう一度読みたい名詩」「学校で覚えたあの漢詩」などの章立てで、名句を多数紹介している。対句、受け句など漢詩を理解するための基礎知識をはさみ、詩の真意をつかむための語句の典拠を示してくれる。
 ここまで挙げた新書と少々趣が異なるのは『漢詩入門』(一海知義著、岩波ジュニア新書)である。白居易の「香炉峰の雪」などの名詩を紹介している1部に加え、2部では漢詩を味読するのに役立つ用語、様式を解説した「漢詩についてのQ&A」がある。対句、脚韻、平仄、律詩・絶句などについての基礎的な説明があり、初心者には便利だ。夏目漱石、河上肇など日本人の漢詩を取り上げているのも興味深い。
 マンガ入りで楽しめるのは『人生の無常を楽しむ術-40歳からの漢詩』(野末陳平著、講談社+α新書)。「漢詩はむずかしくない。おもしろくて滑稽なのだ」と言う著者は、井伏鱒二の名訳「サヨナラダケガ人生ダ」で有名な于武陵の「酒を勧む」などの詩句にも触れつつ、漢詩をひもときながら人生論を語る。
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