『洋菓子はじめて物語』(吉田菊次郎著、平凡社新書)の著者は、東京・渋谷のフランス菓子店、ブールミッシュの店主であり、メディアにもよく登場する人。本書ではチーズケーキに始まり、プリン、タルト、シュークリームなど、洋菓子の来歴を種類別に語る。「はじめて物語」というように、その菓子がどのように誕生し、日本に伝えられたのかが主題である。
たとえば、プリンはいかにして誕生したか。はじめてプリンを作ったのは、料理人でもなく菓子職人でもなく、なんとイギリスの船乗りだった。食材も器具も台所も限られた船内で、あり合わせの材料をナプキンで包んで蒸し焼きにしたのがその起源。やがて陸に上がり、溶液のみ固まらせ、カラメルソースをからませて今日のカスタード・プディングになった。
洋菓子の誕生と発展には、外交や政治、科学技術が深くつながっている。チョコレートはヨーロッパ人の中米侵略によってもたらされ、アイスクリームは冷却や冷凍の技術によって可能になった。ムースの流行の背景には、ミッテラン政権の時短政策があったとか。日本人にとって洋菓子は西洋文明のシンボルでもあった。
ケーキというと、スポンジ台の上にクリームを塗って苺などを載せたショートケーキを連想するが、実際には驚くほどさまざまな種類がある。その世界を丁寧に紹介したのが『ケーキの世界』(村山なおこ著、集英社新書)。
ブールミッシュが洋菓子界の老舗ならば、新興のスターは自由が丘のモンサンクレール。その物語が『パティシエ世界一』(辻口博啓・浅妻千映子著、光文社新書)。華麗な味の裏側には努力とドラマがある。最近、デパートB1、通称「デパ地下」が人気だが、そこでもスターは有名洋菓子店の出店。『デパートB1物語』(吉田菊次郎著、平凡社新書)には、そんなデパ地下の裏側が。
パンは西洋から伝わったもの。餡は日本伝統のもの。では、これを組み合わせたあんパンは、和菓子か洋菓子か、そもそも菓子なのかなんなのか。『銀座木村屋あんパン物語』(大山真人著、平凡社新書)は、あんパンがいかにして誕生したかを伝える。あんパンの歴史はそのまま西洋文明受容の歴史であり、日本人の生活の西洋化の歴史でもある。一方、『和菓子の京都』(川端道喜著、岩波新書)は、洋菓子に押されてなくなることもなく、愛され続ける京都の和菓子と京都の町を案内したもの。
『戦下のレシピ』(斎藤美奈子著、岩波アクティブ新書)では、もののない時代に、いかに甘いものが貴重だったか、いや、もののない時代だからこそ、いかに甘いものが人々の心を慰めたかがわかる。
|