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日本の経済格差
長いこと日本は貧富の差が少ない平等な社会だといわれてきた。近年それはいきすぎた「悪平等」と批判され、経済的停滞の理由のひとつとされた。競争原理の導入は成長の動機づけであると同時に、格差の拡大を目指す。しかし本当に貧富の差は小さいのか、平等な社会なのか、検討してみる必要がある。
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読書ガイド
 日本が一人あたり国民総生産(GNP)でアメリカを追い抜いたのは1987年。この国が「経済大国」と呼ばれるようになったのはその頃からだ。
 しかし、数字とは裏腹に豊かさの実感を得られないのはなぜなのか。我々には何が欠けていて、21世紀に向けてどのような豊かさを追求していけばいいのか。このような問題意識に立って、その方向性を提案したのが『豊かさのゆくえ 21世紀の日本』(佐和隆光著、岩波ジュニア新書)である。発行は1990年。ちょうどバブルのピークの頃である。
 東京のサラリーマンにとって住宅の購入がほぼ不可能になったこと、地価暴騰による資産不平等、「機会の平等」がいちじるしく損なわれたこと、東京と地方の格差拡大、地方における公共的な施設の貧しさ、諸外国に比べ高い物価。以上の6項目を、豊かさと並存する貧困として著者は挙げている。
 この指摘から10年以上が過ぎ、都内でも新築マンションが3000万円台で買えるようになり、物価も下落したが、「機会の平等」についてはさらに悪化しているように見える。日本は「努力すればナントカなる」社会なのか、「努力してもしかたない」のか?
『不平等社会日本 さよなら総中流』(佐藤俊樹著、中公新書)は、社会の公正さや活力を維持する上で無視できないこの問題について、調査データの分析から切り込んでいる。戦後の高度成長期、日本は戦前に比べて努力が報われる「開かれた社会」であったが、近年、その開放性は急速に失われて親と子の地位の継承性が強まりつつあり、戦前以上に努力が報われない「閉じた社会」になりつつあると著者は指摘。親が高学歴かつ管理職で本人も高学歴の「相続者」たちが、自らの実績ではないものまで実績と勘違いし、既得権益と化した"遺産"を受け継いでいる危険性に警鐘を鳴らす。
 同様に、「機会の不平等」の進展について論じているのが『日本の経済格差:所得と資産から考える』(橘木俊詔著、岩波新書)。従来、日本は平等社会であり、欧米諸国と比較すると所得分配の平等性は高く、貧富の格差はさほどないと考えられてきた。しかし、昨今の成果主義の導入で所得分配の不平等化が進展しているのではないか?バブル経済とその後の長期不況で資産分配の平等性はどうなったのか。
 本書は統計データを用いてこれらの問題について検証するとともに、教育や職業、あるいは結婚、親の経済力などの社会的な要因が所得や資産の決定に与える影響についても分析している。
 その結論は、所得分配や資産分配は不平等化の方向にあり、加えて職業や社会の固定化、すなわち親の職業や所得水準が子どもの階層を直接決定する度合いの高まりや、結婚を通じた世代間の階層固定化の兆しが見えている、というもの。要は、機会の平等に黄信号がともっている、というわけだ。その上で、合理的な理由に基づくものは非難できないが、理にかなわない不平等化を阻止する政策を推進すべし、と提言する。
『論争・中流崩壊』(「中央公論」編集部編、中公新書ラクレ)は「中流崩壊」論争の論文集。『日本再生論:「市場」対「政府」を超えて』(金子勝著、NHKブックス)は、新しいリスクの時代に対応した政策思考と、それを支える社会哲学を模索している。
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