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永六輔
ラジオタレントとして、また旅人として、永六輔が各地の人々や芸人、職人、商人らを取材して拾い集めてきた言葉で構成される新書。
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読書ガイド
 1994年に出版された『大往生』(岩波新書)以来、永六輔はたくさんの新書を書いている。永六輔は浅草のお寺に生まれ、大学時代から放送作家として草創期のラジオ、テレビ番組の構成に関わり、長じては作詞家、司会者、語り手などとして、多方面で活躍してきたマルチタレントの走りである。その著書のほとんどは、旅人でもある永六輔が、各地の人々や芸人、職人、商人らを取材して拾い集めてきた、珠玉のような言葉の数々で構成されている。
 その言葉たちは、当代一の聞き手であり、老練の構成作家である著者の手により、人々の口の端から誕生したときと同じように生き生きと、ときにはさらに輝きをまして、本の中に甦っていて、それが、「永六輔ワールド」とでも形容したくなるような世界を織り成している。
『大往生』は老いと病、そして死について語られた様々な言葉を集めた名言集である。
「煙草、酒、こんなにおいしいものをやめると…身体によくないよ」「旦那は定年後のことをいろいろ考えているんだけど、私は未亡人になってからのことを考えているの」「病人が集まると、病気の自慢をするんですよね。もちろん、重い人が尊敬されるんです」「別れる淋しさ、生きてきた虚しさ。それに耐えれば、おだやかに死ねます」「美しい生命とか、汚い生命とか、老いた生命とか、若い生命とか、そういう区別はないはずなんですけどね」など。
 どの一つをとっても、ぷっと笑いがこみ上げてきたり、はっとしたり、深く納得させられたりする寸言ばかり。それらの言葉はそのまま、人生の知恵である。
 岩波新書の永六輔の本は、『二度目の大往生』『職人』『商人』『芸人』『嫁と姑』『夫と妻』『親と子』と続く。どれも、永六輔が拾い集めた名言と、その解説、さらには、永六輔が取材した人々の物語やインタビュー、対談・講演録などで構成されている、紙上バラエティともいうべき作品である。
『職人』には「コラッ!あんまり勉強しすぎると、バカになっちゃうぞ」「職業には貴賎はないけれど、生き方には貴賎がありますねェ」など、物を作る職人だからこそ言える知恵がある。『芸人』では「人間である前に芸人であって欲しい」「スターであるかぎり、幸せであるわけがない」「芸人・役者・芸術家は早く死んでください。修業で命を縮めてください」など、芸の世界に生きることの楽しさや苦しさを思い知らせられる。
『職人』『芸人』『商人』の三作品は、それぞれ、それを読むうちに、「職人とはどういう生き方なのか」「芸人とは」「商人とは」が、理屈抜きに明らかとなっていく、不思議な作品群である。
『職人』『芸人』『商人』が生き方三部作とすれば、『夫と妻』『親と子』『嫁と姑』は家族三部作と言える。そして、家族三部作は、永六輔の辻説法という趣を感じさせる作品群となっている。『夫と妻』は、夫婦関係・男女関係の機微、面白さをテーマに、「もっと粋にいきなくちゃ」と勧め、『親と子』は「本気で、勝負しましょうよ」と、親に子ときちんと向き合うことを提言する。そして、『嫁と姑』は「向かい合うことが大切」と語りかける。この三部作で永六輔は人間関係のタテとヨコとナナメを縦横に語りつくしている。
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