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民族問題
東西冷戦後の世界では、国家体制を乗りこえ民族のせめぎあいが始まった。民族紛争はなぜ起こるのか、「統合」「ヨーロッパ回帰」などをキーワードに、民族問題の本質を探る。
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読書ガイド
 世界の多くの国々において、民族と国家の間での紛争が激しさを増している。冷戦が終結した途端に、イデオロギーによる紛争と交代するような形で表面化してきた民族紛争。民族はなぜ悲惨な衝突を繰り返すのか。
『「民族紛争」の明日を読む』(世界情勢研究会著、ベスト新書)は「21世紀の最重要キーワードである民族を軸として世界の紛争を取り上げた」とまえがきに記されているが、新聞で話題になる紛争地域を隈なくといっていいほど取り上げて、簡潔に解説している。著者は歴史、地理、宗教、社会学などの分野で実績のあるベテランライター集団。1章「宗教対立で引き起こされる紛争」では、アフガニスタン紛争、インド・パキスタン紛争、パレスチナ・イスラエル紛争などを紹介。2章「大国に潜む民族紛争の火種」ではアメリカ合衆国の民族問題、中国の漢民族と少数民族との対立、イギリスと北アイルランド問題など、そして3章以下ではユーゴ紛争、アフリカのルワンダにおけるツチ族とフツ族との対立、トルコ対ギリシャの歴史的な争い、などを扱う。全体でおよそ30の地域紛争を解説しているが、複雑な争いをコンパクトにまとめて整理してあるのでわかりやすい。世界地図を横に置き、眺めながら読めば理解がいっそう深まる。
『統合ヨーロッパの民族問題』(羽場久浘子、講談社現代新書)は、1989年の社会主義崩壊がヨーロッパにおける民族問題の噴出の原因ではなく、「ヨーロッパ回帰」「ヨーロッパ統合」という枠組みへの動きがその原因である、という立場で中欧の民族問題を取り上げる。『「ヨーロッパ回帰」「ヨーロッパは一つ」という言葉は、これまでヨーロッパから排除されていた東欧にたいして、「市場化」と「民主化」を導入することを意味し、直接的にはEC(ヨーロッパ共同体)/EU(ヨーロッパ連合)やCE(欧州審議会)、さらにNATOへの参加という問題である』、と記されているように、著者は西欧の豊かな資本主義システムの内側に入ろうとする、東欧や中欧の死にもの狂いの闘いが、民族主義紛争として現われてきていると分析する。これらの民族紛争を解決する手段として、少数民族の人権の保障や、とりあえず国境線を封鎖するなど、あるべき統合ヨーロッパの方向を探り将来の展望を提示する。
『新しい民族問題』(梶田孝道著、中公新書)は、EC統合下での移民問題を取り扱う。『EC市場統合の重要な要件として、「人の自由移動」が含まれていたことは、よく知られている』と著者は記しているが、外国人移住者がヨーロッパにおける民族問題を複雑にしたことは否定できないようだ。本書はEC統合時代を分析したものなので、視点はユニークだが内容的にはすこし古い。
 具体的な民族問題を扱うものではないが、根源的に民族問題を考えてみよう、というアイディアから生まれたのが、『民族という名の宗教』(なだいなだ著、岩波新書)。本書は、民族という概念がどのようにして生まれてきたのかを、著者と編集者のA氏との対話形式で、世界歴史の要所要所をざっとおさらいしながら解説する。2000年にわたり放浪するユダヤ人やユーゴ紛争などを例にあげつつ、「民族」とは国家が人を集団としてまとめていくために作り出したフィクションである、という結論を導き出す。民族主義を克服する道を探る、ゆったりとしたペースでの対論は、ときにユーモアを交えながら進むので、歴史知識のない人でも面白く読める。
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