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天才
天才とはどのような人か? 天才の心理学的分析と、天才と呼ばれた詩人、音楽家、作家、哲学者らの生涯を考える。
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読書ガイド
 レオナルド・ダ・ビンチ、モーツァルト、ニュートン、アインシュタイン、ニーチェなどなど、天才と称される芸術家、科学者、哲学者は多い。いったい、天才とはどのような人々で、どのような特質を持ち、共通点があるのか。
「天才と狂人は紙一重」と言われるが、歴史上、天才の研究に先鞭をつけたのは、狂気を研究したクレッチマーやランゲといった精神科医たちであった。『天才:創造のパトグラフィー』(福島章著、講談社現代新書)は、その成果を踏まえつつ、天才論を展開している。
 クレッチマーは「天才とは、積極的な価値感情を、広い範囲の人々の間に、永続的に、しかも稀に見るほど強くよびおこすことのできる人格である」といい、ランゲは、「天才とは実体ではなく関係である」とする。無名な天才は存在せず、ゴッホやシューベルト、宮沢賢治を引くまでもなく、人は有名になって初めて天才と称されるようになるのである。福島はそうした先達の研究を踏まえ、無意識の世界や霊感と創造性や、知能と創造性の関係、また、正気と狂気、妄想と創造、天才と父、天才と母などの関係を、精神分析の手法を使って考察する。
『天才』(宮城音弥著、岩波新書)も、精神分析の専門家による天才論。著者は天才とは、社会的適応性を犠牲にして創造作用を行う人間だ、と指摘する。
『ナルシズム:天才と狂気の心理学』(中西信男著、講談社現代新書)もまた、ナルシズムという観点を入れながら天才とその狂気について考察した著書だ。ルネサンスの超人レオナルド・ダ・ビンチや岸田劉生、三島由紀夫、ヒトラーなどの生涯を分析し、過剰な自己顕示や性的倒錯、妄想などの天才たちの狂気の根に、自己愛(ナルシズム)をみていく。
 天才たちの生涯はさまざまに紹介され、伝説化されている。強調されるのはその天才ぶりや異常さばかりで、天才の素顔はなかなか見えてこない。『心にしみる天才の逸話20:天才科学者の人柄、生活、発想のエピソード』(山田大隆著、ブルーバックス)は、天才の意外な素顔や、大成功に隠された失敗談などを綴った、楽しい読み物である。たとえば--、万有引力のニュートンは大変陰湿で冷酷な性格で、功成り名遂げ英国の学会の権力を掌中に納めた後、自分を批判した科学者の業績をすべて歴史から抹殺してしまうなど、批判者の存在を許さなかったため、イギリスの解析力学と数学は大陸に比べ100年遅れたといわれているそうだ。晩年の造幣局長官時代には、悪貨を鋳造して逮捕された人々をことごとく死刑に処した。相対性理論のアインシュタインはほとんど本を読まない人だった。彼の業績は30代半ばまでに完成されたものばかりで、晩年に取り組んだ「統一場理論」や「宇宙論」にはことごとく失敗している。父の書斎を庭のようにして育った湯川秀樹はひ弱でいじめられっこだった。キュリー夫人はとても野心家で、研究を続けるために女性に縁のなかった大学教授の夫と結婚し、ラジウムの分離に成功した。夫人は放射性物質の濃縮の方法を、学問の発展のため秘密としなかった。しかし、それがあだとなり原爆の製造に直結した。夫人は研究過程で多量の放射線を浴び、白血病で亡くなる。18世紀に活躍した「質量保存の法則」のラボアジェは、徴税請負人組織という暴力団まがいの組織の幹部となり研究費を捻出したが、フランス革命ではそれを咎められ、国家犯罪人として処刑されている--。興味の尽きない話が満載である。
『天才は冬に生まれる』(中田力著、光文社新書)も、ニュートン、コペルニクス、ホーキングら天才科学者の生涯と創造の秘密を綴った読み物である。著者によると、不思議と天才科学者には冬に生まれた人が多いのだそうだ。興味をそそられるタイトルで、巻末に短く発生学的な説明も試みられているが、とってつけたような説明で残念ながら説得力はまったくない。
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