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ハリウッド
いまや米国だけではなく、世界の映画の中心地となったハリウッドの歴史、ビジネスなど、ハリウッドについて。
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読書ガイド
 ハリウッドを語った新書の類には、アメリカ映画史や社会文化史からの解説、巨大映画産業として捉えた著作、あるいは映画のなかでの人種・民族描写から読み解いたものや監督論など、さまざまなアプローチがある。
 気鋭の映画研究者が「ハリウッドをまるごと語ってみたい」と試みたのが『ハリウッド100年史講義』(北野圭介著、平凡社新書)。「です・ます体」の口調でハリウッド史をかみくだいて講義した一冊だが、内容はかなり濃い。シーンとショットによる映像言語の誕生、「古典的ハリウッド映画」の定型、監督の時代からプロデューサーの時代へ、映画会社の淘汰と再編、30年代の黄金期、50年代黄昏期を経て再生へ、そして80年代からの大作主義、新作家主義、コングロマリット化の道へ……随所で有名作品を例に挙げ、最近の映画理論もふまえつつハリウッド100年史を手際良く紹介している。
 これまで、アメリカ映画史の教科書としてよく使われてきたのが、『アメリカ映画の文化史 上・下』(ロバート・スクラー著、講談社学術文庫)である。「ハード」である映写機はエジソンが発明し、「ビジネス」にはユダヤ系移民グループが参入、グリフィス監督は「映画芸術」を確立しと、人々が映画に吸い寄せられていく初期の歴史が興味深い。また、アメリカ文化の<神話>を作った映画人としてディズニーとキャプラが取り上げられている。話の中心は戦前だが、ハリウッドの誕生と成長をアメリカ社会文化史の観点から追っているのが面白い。
 ハリウッド映画をこよなく愛してきた映画評論家の川本三郎は『アカデミー賞』(中公新書)で、オスカーにまつわる26のエピソードを楽しく紹介している。往年の大スターや監督の悲喜こもごもの裏話は、ハリウッド・ファンにはたまらないだろう。巻末には1992年までの受賞作・受賞者のリストが付されている。
 巨大産業としてのハリウッドをクリティカルな目で追ったのが『ハリウッドはなぜ強いか』(赤木昭夫著、ちくま新書)。華やかさの裏にあるたくましい商魂や政治性、観客の心理を操作するカットとモンタージュの手法、ハリウッドは消費主義の楽園と、語り口はごく辛いが、その指摘は本質を射ている。ハリウッドの強みは、効率良く機能する分業体制にまずあると著者は言う。映画作品のエンドロールに登場する膨大なスタッフは私たちにもおなじみだが、監督、俳優、撮影、照明、メイク、美術、衣装と、職能集団がハリウッドで形成されたのも、もとはといえばスタジオの制作システム合理化策から生まれたものだった。また、「パラマウント判決」(1949)により、巨大化・寡占化したスタジオ(制作)からいったんは配給・上映が分離されたものの、歴史は巡り、「ブロックバスター」と呼ばれる大作主義の出て来た80年代からは再びメジャー・スタジオが配給権を支配するようになった。時代や環境変化への適応力もまたハリウッドの強みである。このほかにも、ストーリー展開重視のヒット方程式、ビジネスの利益構造、フランスとの確執史、哲学と映画の関係など、話題は縦横無尽だ。なお、アメリカ映画の上映収入は国内より海外の方が上回っているが、海外市場の中では日本が断然トップで、2位以下のヨーロッパ諸国やカナダを大きく引き離している。
 さらに、映画の都の弱肉強食の実態を伝えてくれるのが『ハリウッド・ビジネス』(ミドリ・モール著、文春新書)だ。映画化原作権は大物作家ともなると数億円だそうで、原作権・著作権をめぐる訴訟もハリウッドには数多い。スピルバーグの「アミスタッド」、ヒッチコックの「裏窓」、ディズニーの「バンビ」なども、思わぬ訴訟に巻き込まれてきた。このほかにもリメイク権、コミック実写化権、肖像権などをめぐるドロドロした訴訟エピソードが続くが、「無茶なことでも主張した方が勝ち」というアメリカ社会には、現地の弁護士である著者もため息をついている。制作会社の帳簿にはからくりがあり、大ヒット作でもコストを差し引いた最後のネット収益をマイナスと計上することもしばしばで、グロス収益契約にしていなかったために憂き目をみた者もいる。ただ、昨今は映画の収益も後のビデオ化やDVD化、キャラクター・グッズなどの二次マーケットでようやく生み出せるのが実態だ。映画担当責任者の給料が10年で120億円など、ケタ違いの数字からハリウッドの巨大さが分かってくる。
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