テーマで探す新書ガイド 新書マップ BOOK MAP web magazine [ 風 KAZE ]
>>新書マップ検索画面へ戻る
テーマ Theme
テーマ Theme
どうやって働くか
働かなければ食べていけない。しかし、人は金のためだけに働くのではない。カントをもじっていうなら、労働をたんに手段としてではなく、目的として生きるような、そんな働きかたができれば最高だ。しかし、経済効率はときとして働きがいとは矛盾する。
関連書籍を探す
読書ガイド
 働くことの意味、ひいては、生きることの意味を見つけにくい時代だ。『働くことは生きること』(小関智弘著、講談社現代新書)は、京浜工業地帯の町工場で旋盤工として長年働き、作家としても知られる著者の自伝的評論。左翼運動への憧れから、抽象的「労働者」になろうと工場へ入っていった若き日の著者は、たちまち労働現場の世界に圧倒され、いつしかその魅力にとりつかれる。やがて、先輩や同僚たちを見るうちに、働くことそのもののなかに、生きる意味を見つけていく。金銭でも名誉でもなく、ものをつくることそのものに楽しさを見いだす。同じ著者による『仕事が人をつくる』(小関智弘著、岩波新書)は、零細工場がひしめく下町の路地から見た労働哲学と人間哲学であり、『ものづくりに生きる』(小関智弘著、岩波ジュニア新書)はこれから社会に出ていく子供たちに向けた、労働の喜びと生きる喜びを素直に語ったものである。
 しかし、バブル崩壊とグローバリゼーションの波は、労働現場を大きく変えようとしている『能力主義と企業社会』(熊沢誠著、岩波新書)は学者の立場から、『成果主義を超える』(江波戸哲夫著、文春新書)は作家の立場から、『リストラと能力主義』(森永卓郎著、講談社現代新書)は金融系シンクタンク研究員の立場から、それぞれ90年代以降の労働現場の変化、企業の変化、そして個々の労働者が置かれている変化を追っている。年功序列や終身雇用が、構造改革をさまたげるものとして認識されて、労働者は市場の荒波のなかに無防備なまま放りこまれている。
 不安定な雇用が常態となると、ひとつの職場にしがみつくよりも、小関が町工場の渡り職人として描いた、自慢の腕ひとつで労働現場を渡り歩くような生き方のほうが賢明といえるかもしれない。『倒産はこわくない』(奥村宏著、岩波アクティブ新書)が示唆するところも、そういうことではないのか。
『若者が「社会的弱者」に転落する』(宮本みち子著、新書y)は、じつは雇用不安のしわ寄せは中高年層よりも若者層に厳しく、多くの若者が定職を得られない実態を描いている。メディアは「無責任なフリーター」像を書き立てるが、定職に就きたくてもかなわないのが実像だという。それとは対照的なトーンが、『パラサイト・シングルの時代』(山田昌弘著、ちくま新書)。こちらは、成人しても親と同居し、住居費や光熱費、食費など生活に必要な経費の大半は親に寄生し、自分が得た賃金は趣味や遊興費に使う独身者が描かれる。しかし、「社会的弱者」も「パラサイト・シングル」も同じコインの裏表である。『社会的ひきこもり:終わらない思春期』(斎藤環著、PHP新書)で報告される「ひきこもり」者は、パラサイトの究極の姿かもしれない。
ウインドウを閉じる
<< PAGE TOP