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産業廃棄物
古くて新しい産業廃棄物問題は文明社会にとって環境問題の永遠のテーマである。その実態のルポ、産廃との闘い、ゴミから発生する有害化学物質の影響まで。
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読書ガイド
 産業廃棄物問題を扱った書籍では、廃棄物を少なくすること、きちんとした処理をすることが重要だという指摘がされるのが普通なので、産業廃棄物問題の結論は自明だとも言える。しかし、廃棄物問題はそれほど単純ではない。景気がよいと排出量が増大し、悪くなると不法投棄や有毒物質未処理の問題が増えるなど文明社会にとってやっかいな問題である。しかも廃棄物を出した企業よりも、廃棄物を処理した業者に批判の目が集まることも多く、問題が複雑化している。
 それゆえ、そこに企業や人間のどのような論理があり、企業や行政、裁判、住民の間でどのように加害者、被害者の立場が入り混じったダイナミックな動きがあるか、さらに現実的な展望が見出されているか。こうした点についてどこまで描かれているかが書物としてのポイントになる。
『山が消えた:残土・産廃戦争』(佐久間充著、岩波新書)で取り上げられている現場は千葉県が中心で、山砂の採取による環境影響からダンプ公害、採取跡地に大量に持ち込まれる産業廃棄物投棄、地域住民の抵抗や行政の対応まで、一連の産業活動と廃棄物に関する動きが描かれている。廃棄物に含まれる重金属、PCBなど有害化学物質の問題、裁判闘争や住民投票など市民団体の取り組みも取り上げられており、廃棄物処分問題の全国ネットワークができていく経緯も報告されている。また、山砂採取場の跡地を訪問もしているが、山砂が掘られた後に、工事現場で出された残土が持ち込まれ、山砂採取と残土廃棄が同じ場所で行われるケースが多いことがわかる。目次の表現によると、「『砂山』のお返しは『ゴミの山』」というわけだ。「社会の発展を象徴するかのような都市ビルの林立と引き替えに、地方の自然の山が消滅して産業廃棄物処分場に変化している」という指摘は重要な視点だろう。
『産業廃棄物』(高杉晋吾著、岩波新書)では、現場レポートとして、有害物質が流れ出し、住民の反対運動が起きた千葉県、静岡県、長野県の産業廃棄物処分場の問題が紹介されている。また、同じ物質が、誰が排出するのかによって産業廃棄物と一般廃棄物のどちらにも分類されたり、行政と業者のどちらの処理になるかが決められたりする複雑な法律の問題も指摘されている。本書は1991年の初版であり、その後、法律の整備や行政の対応の変化などもあったが、指摘された問題の多くは依然として解決されていない。これは、2002年発行の『山が消えた:残土・産廃戦争』で、「気がついてみたら、各地で『山が消え』、わが国は『産業廃棄物列島』に変身していた」と指摘されていることからもうかがえる。『産業廃棄物』が版を重ねながら読まれている所以であろう。
『ゴミと化学物質』(酒井伸一著、岩波新書)は、冒頭で「本書は、廃棄物と化学物質からみた現代社会への非常事態宣言である」としている。内容は、第1章で日本におけるゴミの行方をレポート、第2章で有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約で定められている有害性の考え方を紹介、第3章でダイオキシンとゴミ焼却、第4章では残留性有機汚染物質と環境ホルモン、第5章では自動車廃棄物処理問題の所在と対処方法について取り上げ、第6章では水銀問題を例に、化学物質の基本的対処方法としてのクリーン・サイクル・コントロール戦略の考え方を示している。
『中坊公平・私の事件簿』(中坊公平著、集英社新書)は、中坊弁護士が関係した14の事件について記述したものであり、廃棄物問題はそのなかの1件だけだが、廃棄物問題というと必ず出される豊島の事例に献身的に取り組み、中坊弁護士なしでは解決が難しかったと思われるだけに、廃棄物問題を考える際には、本書の「ケース13 産業廃棄物の不法投棄・豊島事件」は必読といえよう。
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