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諜報機関
国際政治や企業社会に暗躍するスパイはどんな生活を送りどんな思考様式をもつのか。米軍の諜報活動の実態と日本兵捕虜たちの生態、対ロシア諜報・謀略工作「明石工作」についてなど。
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読書ガイド
 20世紀の終幕をまたずにソビエト共産圏の崩壊と冷戦構造の消滅ということが起こった。それによってスパイの世界も様変わりした。スパイ小説というジャンルも滅び行く運命にあるのだろうか。
 世界最初のスパイ活動として記されたのは旧約聖書の「民数記」13章。モーセに命じられたヌンの子ヨシュアがパレスチナの地を、イスラエルの民の安住の地として適切かどうか、偵察しに行ったことが記されている。日本におけるスパイとは、その起源を聖徳太子が“忍び”を側近に置いたことに求められる。連綿と伝えられている伊賀忍法や甲賀忍法は『忍びの者』(村山知義著、岩波現代文庫)によると、陸軍中野学校をへて公安警察に引き継がれているとのこと。
 スリル満点だが常に死と隣り合わせのスパイたちの日常とはいったいどんな世界なのか。
 たっぷり案内してくれるのが『スパイの世界』(中薗英助著、岩波新書)。スパイ小史から活動目的、スパイの適性、日常の仕事、冷戦後のスパイたちの行方、そしてスパイ小説を書く作家(ほとんどが、スパイ経験者)まで網羅し、緊張感にあふれた文体で紹介する。
 元CIA長官アレン・ダラスによるとスパイになる人間は三つに分類される。イデオロギーに基づく人間、陰謀好きな人、そして現実的な金目当て。また優秀なスパイとは、人を見る能力があり、困難な条件下で他人と協力できる人、探求心と工夫力があり、事実と虚構をみわけ、微細なことにも注意を払い、考えを簡潔、明晰、かつ面白く表現でき、沈黙しなければならない時は口を閉ざす。まるで優秀な商社マンの適性を聞いているようだ。イギリスMI6(Military Intelligence)のスパイたちはいずれも育ちも頭もよく貴族階級に属していなければなれない、というのには驚く。ゾルゲ、尾崎秀実、アラビアのロレンス、マタ・ハリ、キム・フィルビーなど、歴史を騒がせたスパイの姿も簡潔明瞭に記述されている。
 ゾルゲと尾崎秀実についての関わりを生き生きと描く『上海1930年』(尾崎秀樹著、岩波新書)は、弟の文芸評論家尾崎秀樹の目からみた朝日新聞記者尾崎秀実の上海時代の行動。あとがきに「1930年前後の尾崎秀実の行動をさぐってみたいと思ったのは、戦後まもない頃のことだった。そこでの多くの出会いと別れ、魯迅やスメドレー、ゾルゲや川合貞吉(中略)らとの交渉をたどることで、その激動の時代の青春群像を確かめたかった」とあるが、ゾルゲもスメドレーも魯迅も内山書店も、じつにさわやかな印象を残す。その尾崎秀実がゾルゲに対する情報提供のスパイ容疑で捕まり、昭和19年、絞首刑になる前に二度にわたり書いた『上申書』(尾崎秀実著、岩波現代文庫)。『特高月報』に掲載され、特高警察官から「転向」と認められたものである。コミュニストとして生きようときめた人間が最後に愛国者、民族主義者とも思える内容の告白をした上申書。これをどう判断するのか、いまだに意見が分かれるところである。『ゾルゲ追跡』(F.W.ディーキン、 G.R.ストーリィ著、岩波現代文庫)は、現代史最大の成功を収めた諜報事件=ゾルゲ事件を学問的に研究したもの。ゾルゲに与えられた日本での使命は「日ソ戦争の可能性を探ること、できうればそれを回避するように努力すること」だった。ゾルゲは見事にその使命を達成し、その直後に捕まり、尾崎秀実と同日に絞首刑となった。
『CIA』(斎藤彰著、講談社現代新書)は派手なイメージで想像してしまうCIA(アメリカ中央情報局)について、その日常性や普通の官公庁と変わらない官僚機構、膨大な予算と人員を駆使しどのように情報が集められ、それを精製してつくられたレポートが政策立案にどう関わっていくのか、など、地味ではあるがリアルなCIAの実像を描く。
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