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韓国と日本
近くて遠いと言われてきた隣国韓国。韓国は日本をどのように捉え、日本は韓国に対し、どのようなイメージを持っているのか。韓国の反日感情の原因は何かなど。
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読書ガイド
 今日の日本では、多くの人が隣国の大韓民国(韓国)に好感を持っている。が、つい20年ほど前までは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の方により好感を持ち、韓国を嫌う人が多かったことを覚えている人は少ない。他方、韓国では、戦前の植民地支配への反発に基礎付けられた「反日」感情が根強い一方で、日本に好感を持つ人々も増えていると聞く。古代には朝鮮半島経由で様々な先進技術や文化が日本にもたらされるなどの交流史があり、近世・近代には日本が様々な形で侵略と支配を繰返した歴史のある両国だが、互いのことをどのように感じているかについて、特に日本では関心が高いとはいえない。それが、相互理解が深まらない一因でもある。
 日韓両国の大学で研究生活を続けてきた鄭大均による『韓国のイメージ : 戦後日本人の隣国観』と『日本 (イルボン) のイメージ : 韓国人の日本観』(いずれも中公新書)は、日韓両国の隣国観を、単行本や新聞雑誌による言説を頼りに冷徹詳細に検証した大著で、両国市民の相互理解の一助となるに違いない貴重な図書である。ともすれば、韓国側の「反日」と日本側の「蔑視」ばかりが強調されがちな双方の隣国観であるが、両著によって浮き彫りにされる両者の隣国観は、ひとことで言えば「アンビバレンス」である。鄭氏はそれを「日本人の韓国人に対する同情と蔑視、韓国人の日本人に対する憧憬とルサンチマン(恨)」と整理している。
『韓国のイメージ : 戦後日本人の隣国観』は、戦後日本人の韓国観の変遷を見ることで、韓国観の原型と現在のそれを考察する。戦後の韓国人観は大きく3度の変化をみせている。第1期は戦後20年間の無関心、避関心の時代、第2期は65年国交正常化以後の約20年で、金大中事件を契機に政治的関心が高まる。第3期はソウルオリンピックを契機とした84年ごろからの韓国ブームから今日までで、日本人の韓国文化・娯楽への関心が高まり、日本人は新たに韓国と出会うことになる。
 著者は日本人の韓国への関心のあり方を(1)過去の朝鮮に郷愁をもつ「植民地体験型」、(2)植民地支配の責任を問う「贖罪型」、(3)政治的関心を向けるイデオロギー型(親韓国の保守派と親北朝鮮の進歩派に分かれる)、(4)古代の交流史に関心を寄せる、「古代史型」(5)生活文化行動様式に関心を向ける「異文化型」に分類し、どの関心型にも好感と反感が共存していることを報告する。また、日本人が伝統的に持ってきた隣国への蔑視に加え、戦後の混乱期に、それまで日本人から抑圧されていた「旧植民地出身者」(今日の在日)の一部に無法な振る舞いがあったことが戦後一時期の韓国・朝鮮への否定的イメージの原型となったことや、戦後の韓国が日本文化の最も強い伝播を受けた地域であることなど、見過ごされがちな事実を指摘している。
『日本 (イルボン) のイメージ : 韓国人の日本観』は、反日と日本蔑視ばかりが強調される韓国人の日本人観について、否定的な眺めだけでなく肯定的な眺めにも注目する。植民地支配を通じ、すべての韓国人の家族史になんらかの日本との関係が刻まれており、韓国人の日本への関心は、肯定否定の両方の意味で、日本人の韓国人へのそれとは比べ物にならないほど強い。そこにも両国関係の不幸がある。
 韓国から日本を見る眺めも戦後3期に分類されるが、第3期は82年の教科書問題が契機となっており、この時期に急激に反日感情が高まっている。韓国における反日が、必ずしも戦前とひと続きのものではないことは、日本人が厳粛に受け止めなければならない事実である。
 韓国では解放前(戦前)の植民地世代と解放後(戦後)のハングル世代で日本観に顕著な違いが見られる、という。植民地世代には、幼年期に親しんだ日本文化への郷愁と植民地支配への憎悪、反日感情が同居している。植民地世代の人々には、兵隊ごっこに興じ、物語に感動したり、歌を歌ったりした子ども時代の幸せな思い出が、忌まわしい過去とならざるを得ないのである。一方、日本に対する否定的なイメージを反日教育によって刷り込まれているハングル世代には、日本に対する敵意や蔑視が自尊を支え、敬意や共感が自嘲の感覚と共に在る、というアンビバレンスが存在するという。
『「反日感情」 : 韓国・朝鮮人と日本人』(高崎宗司著、講談社現代新書)は、韓国・朝鮮人の日本に対する不信感の根拠を探る。著者は、日本が韓国・朝鮮に負わせた傷には、侵略と植民地支配という古い傷と、敗戦・解放後の政治家の暴言や朝鮮政策の新しい傷の二つがあるとし、韓国・朝鮮の反日感情を、正当な根拠を持つものだとする。著者の主張そのものには首肯できる部分が多いとしても、その裏づけとなる史実の評価には、かなり強引な論理が散見せられ、疑問を抱かざるを得ない。
『韓国人の歴史観』(黒田勝弘著、文春新書)は、高崎とは全く反対の立場から書かれている。著者は、「韓国における反日感情の基本は日本に対する民族的コンプレックスである」とし、韓国の歴史観を作られた「対日抵抗史観」、過去の植民地支配に反省と謝罪を繰返す日本の歴史観を「贖罪史観」と批判した上で、「反省と謝罪」ではなく、植民地として日本に協力した韓国に対し「感謝と慰労」の視点を持ち込むことの重要性を主張している。著者の主張は日本の保守勢力に根強くある価値観を反映したものだが、こうした言説には強い反発が予想される。
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