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新語、流行語、死語
新語、流行語は時代の流れにともない生まれ、死んでいく。流行語、死語から、世相の移り変わりをよむ。
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「歌は世につれ、世は歌につれ」というフレーズがあるが、昨今あまり聞かなくなった。演歌や歌謡曲が衰退し、歌謡司会の名調子を耳にする機会も減ったからだろう。いずれこのフレーズも「死語」になるかもしれない。
 歌と同じく「コトバ」も世につれ、また世もコトバにつれる。毎年の流行語大賞も、清水寺住職が書く一文字も、そのときの世相をあらわす「鏡」だともいえる。現れては消えてゆくコトバたちは、そのまま私たちの暮らしでもある。コトバも世相も揺れ動く生き物であるかのようだ。
 街を闊歩する「ドライ」な「太陽族」に大人たちが眉を顰めたのは「もはや戦後ではない」と言われた昭和31年。テレビが映画を凌駕し始めて「一億総白痴化」とも叫ばれた年だ。日本社会では「消費は王様」となり、人々は「インスタント」と「レジャー」と「3C」に走ってゆく。そんな時代の流れを、当時流行し今では使われなくなったコトバ、「死語」で綴ったのが『現代「死語」ノート』(小林信彦著、岩波新書)だ。これに『現代「死語」ノートⅡ』(小林信彦著、岩波新書)をあわせれば、敗戦から「ヤマンバ・ギャル」が闊歩する平成10年までの日本現代社会の精神史を、作家・小林信彦の目で読み解いた大作が完成する仕掛けだ。
 こうした流行語は、ことさらメディアが多様化・高度化するほど生まれる数も多く、また短命にもなる。雑誌・映画、テレビから生まれるコトバ、口コミからケータイを介するようになりまたたくまに広まる若者たちのコトバ、インターネットの普及などITに振り回されはじめたオトナたちのコトバは、みな複雑で多様で不透明になりつつある社会の鏡でもある。特にバブルの崩壊から現在に至る「空白の季節」を読み解いた『新語死語流行語 : こんな言葉を生きてきた』(イミダス編集部編、大塚明子注解、集英社新書)は、膨大なコトバの資料を背景に「うざったい」から「ボブ・サップ」までを眺めている。小林信彦風に言うならば「ほんのきのうのこと」だった日々に私たちが生きてきた歴史がしっかり見えてくる。大塚明子の注解を読んでいると、20世紀がもうすでに遥か彼方のようにも感じるという彼女のあとがきが実感できる。また平成の10年間についてコトバを湛然に拾った『平成・新語×流行語小辞典』(稲垣吉彦著、講談社現代新書)は、逆に「そんなコトバもあったのか」とあらためて「ほんのきのうのこと」を再学習できる感もある。
 これらの作業と観点は異なるが、コトバを武器としてきた広告に焦点をあてた『キャッチフレーズの戦後史』(深川英雄著、岩波新書)では、「結婚とは何んぞや」「モーレツからビューティフルへ」「じっとガマンの子であった」「24時間戦えますか」といった広告と消費に使われた言葉から戦後昭和史が読まれている。正史に対して「稗史」(はいし)というコトバもあるが、メディアのメッセージとしては正統ではないながらも、庶民とは近い存在である「広告」から見た戦後史は、リアリティの高い稗史だといっていい。
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