元気がない男が増えているといわれて久しい。リストラの不安を抱き、年下の上司に気をつかい、部下にはため口をきかれ、女房に邪魔者扱いされ、娘には嫌われ、会社にも家庭にも居場所が見つけられない父親。そんな父親をみて育った息子は、将来展望が描けず、就職しないでフリーターをしながら親のすねをかじる。そして、不登校やひきこもりは男子が圧倒的に多いという現実。そんな世相を反映してか、「いい男」をテーマにした新書は盛り沢山だ。
魅力ある男になるためのヒントが満載されているのは『女は男のどこを見ているか』(岩月謙司著、ちくま新書)。男からみた男像と、女からみた男像のズレの最大の原因はなにか? 著者は男女の認識のズレを解明した上で、「いい男」に成長するためには智恵と勇気と愛と感謝の気持ちを合わせ持ち、英雄体験を踏むことにあると提示する。たどりつく結論は「自己実現とは、自分がもっとも楽しく感じられることを実行する勇気」であり「能力はおのれを信じたものだけが開花することができる」。その根底には、生きるとは何か、幸せとは何かといった根元的なテーマが流れている。
『さみしい男』(諸富祥彦著、ちくま新書)は、男の元気のなさの原因解明にページをさく。右肩上がりの経済成長が望めない時代に、男に求められるのは「孤独になる勇気」であり、「一人になる勇気」だと著者は説く。女性は出産や育児によって、それまで築いた仕事や人間関係、さらには価値観を変えるチャンスを得るが、男にはそれがない。男もいろいろなしがらみや人間関係を「すてる」覚悟をすることで展望が開かれるのだという。家計を夫が握る、夫婦で子育てに参加する、40代から夫婦の老後について話し合うなど、「男の自立」に向けた具体策も紹介している。
いい男というからには、外見や着こなしも重要な要素になるだろう。『男、はじめて和服を着る』(早坂伊織著、光文社新書)は、男向け「和服の勧め」の入門書といえる。和服の魅力は「気持ちよさ」「格好よさ」に加えて「圧倒的な存在感がある」の3つと著者はいう。和服の基本、着付けのコツ、帯の結び方や和服のマナーも紹介している。一方、男性のビジネス着、スーツに焦点をあてたのが『スーツの神話』(中野香織著、文春新書)。イギリスで「ラウンジ・スーツ」として生まれた男性服は、またたく間に男の標準服として全世界を制覇した。明治維新政府はイギリスに学んで洋装化を進めた結果、日本では「背広」「スーツ」とよばれ、戦後はあらゆる成人男子が所有する定番服となった。男性の性差の砦ともなっているスーツ、衣服と連動した男性神話の葛藤の歴史が展開されていて興味深い。
「男らしさとは何か?」が問い直される時代を迎えつつも、いい男の手本となるモデルが少ないだけに、各書の切り口はさまざま。『こういう男になりたい』(勢古浩爾著、ちくま新書)は、文学作品からマンガまで幅広いデータを引用しながら、古典的な男らしさから、新たな「男らしさ」の創設を提案。『もてない男』(小谷野敦著、ちくま新書)は、「恋愛なんかしなくてもいいと開きなおれ」と掲げ、「恋愛教」からの脱出をキーワードに展開する。この他、霊長類と人類の歴史を振り返り、オトコが男に進化した歴史をたどる『オトコの進化論 男らしさの起源を求めて』(山極寿一著、ちくま新書)もある。なお、体力減、離別、定年・・・と不安が尽きない中年期の生きざまを考察した『おやじ論』(勢古浩爾著、PHP新書)は悲哀を味わう中年に静かなエールを贈っている。
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