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華僑
世界各地に広がる中国の血統を持つ人々の強力なネットワーク華僑。その歴史、思想、戦略はどのような状況にあるのかなど、華僑のすべて。
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読書ガイド
 世界中に広がる強力なネットワークと豊かな経済力で知られる華僑。しかし、「華僑の実体は一口に総括できるような単純なものでなく、歴史も一本調子なものではない」といわれている。華僑はいったいどのように誕生し、受け入れ国との軋轢をのりこえ経済的に成功していったのか。そして、その未来はどのようなものか。
『華僑』(斯波義信著、岩波新書)は、全世界でおよそ2500万人(東南アジア2100万人、米国100万人、その他300万人)いるといわれている華僑の歴史的な背景を、おもにタイ、インドネシア、マレーシア、シンガポールなど東南アジアを中心に描いたもの。華僑を歴史的な時間軸から理解するための入門書だ。
 序章の「現代華僑事情」から始まり12世紀〜20世紀までの華僑の歴史をたどり、終章で未来の華僑像に触れる。華僑は発生順に4類型に分けられる。「華商型」「華工型」「華僑型」「華裔型」。本書によれば、「華商型は来歴のもっとも古い主流で、他の型の成功者がやがてその仲間に入りこむことでふくれてゆく。華工型は一八〜一九世紀の労働移民であり、いま世界規模で広がっている華僑分布のおもなルーツである。華僑型は今世紀の前半に中国の民族主義とのかかわりで生じた愛国者タイプ。(中略)華裔は差別に抗して、または子弟の教育を考えて第二、第三の安住地へと移る。華裔の大半は高い教育程度を必要とする職業をおび、きわだってコスモポリタンな人々である」。
 華僑は中国福建省から発生したといわれる。12世紀、人口の過剰と海運の台頭から海商となり東南アジアへと出かけていくことが盛んになったようだ。華僑が歴史のうねりのなかで、移住先の国に同化する選択をするのか、国籍はあくまでも中国人でありつづける選択をするのか、受け入れ国の事情もからみ様々なケースがある。どちらを選ぶか決断を迫られる場面では胸中に複雑なものがあったようだ。「いったん中国人に生まれれば、未来永劫中国人でありつづける」という決まり文句が中国にはあるそうだが、「華僑たちは同族・同郷・同業の絆、そうしたコネクションを通じたネットワークをかくべつに大切にして生きてきた」という。華僑の人々は人的関係、「信用」をもっとも重んじる。因みに、彼らは銀行さえも信用しないで「金」で資産を持つことは昔から知られている。これは未来永劫変わらないのかもしれない。
『華僑 : ネットワークする経済民族』(游仲勲著、講談社現代新書)は、主として1980年代の華僑について研究したもの。1979年の中国の政策転換により、停止されていた海外出国が認められ、出国がブームのようになった時代以降の華僑・華人の人の流れとカネの流れはどのようになっているのかを丁寧に描く。アジア・太平洋地域の好調な経済の担い手はほとんどが華僑か中国系の人々の力であるといわれている。華僑の大多数はタイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシアに住む。華僑人口は中国との二重国籍を持つものも多く、数え方が複雑であるようだがアセアンにおよそ1900万人(1987年調べ)とされている。強力な経済ネットワークと「中国人性」による絆で結ばれた、努力家の華僑の所得は一般的にいうとかなり高い。「それでは華僑・華人の勤勉、バイタリティ、冒険心、倹約、金儲けに敏い、商売上手などの特性はどこからきたのだろうか。一つは中国人一般の特性、もう一つは広東、福建などの華南中国人の特性、最後は華僑・華人の特性である。もともと中国人は異民族との不断の接触の中で揉まれてきた。いわばお嬢さん育ちの日本人とは決定的にことなる」と記されている。著者は台湾生まれの在日学者。日本人が戦争中、東南アジアで華僑に行った残虐な行為に対してはかなり手厳しい記述がみられる。本書は華僑に対する概説書としてハンディにまとまっている。
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