テーマで探す新書ガイド 新書マップ BOOK MAP web magazine [ 風 KAZE ]
>>新書マップ検索画面へ戻る
テーマ Theme
テーマ Theme
人口問題
人口問題は、資源枯渇の問題、エネルギー問題、南北問題、労働力、年金など、さまざまな問題につながっている。日本の歴史から、そして中国の現状と展望から、人口問題をとらえる。
関連書籍を探す
読書ガイド
 まだ耳にすることは少ないが、歴史人口学という研究分野がある。人口に関する史料の分析に基づいて、人口の観点から歴史を見直そうとする学問だ。
『歴史人口学で見た日本』(速水融著、文春新書)は、この分野における日本の先駆者が書き下ろした1冊である。各地に残る「宗門改帳」などの史料から、主に江戸時代から明治時代の庶民の生活ぶりや家族の姿を明らかにしていくのだが、これがとても興味深い。
 たとえば、17世紀の諏訪地方では水田の生産性を向上するために従来の大家族が核家族化し、みなが結婚するようになって人口爆発が起こったこと、濃尾地方では農耕で使用される家畜数が減少したのに、勤労と農業技術の発達などで生活水準を上げていたこと、都市の方が農村よりも死亡率が高く、それゆえ人口を外部から流入させなければいけない「アリ地獄」だったこと等々。
 つまり、従来の歴史学が制度や政治を中心に据えたトップダウンの歴史学であったのに対し、歴史人口学は一般庶民の行動の観察に基礎をおいたボトムアップの歴史学であるといえよう。
『人口から読む日本の歴史』(鬼頭宏著、講談社学術文庫)は、前著の速水融氏に学んだ著者が人口の視点から日本の歴史を再構成した本である。人口推計によると、日本では過去1万年の間に4つの波があったという。第1は縄文時代の人口循環、第2は弥生時代に始まる波、第3は14・15世紀に始まる波、そして最後が19世紀に始まり現代まで続く循環である。本書はこの大きな波の中で、人びとの暮らしや人生はどのように変容していったのかを描く。
 そこでは、飢饉や領主の搾取が江戸時代後半の人口停滞をもたらし、困窮が堕胎、間引きの原因になったとする通説には疑義があるとする。例えば、幕末の民間経済は、相当高い所得水準をもたらし、出生制限も広義の産児制限に含まれる性質のものだった、と論ずる。
 つまり経済的な視点から見ると、堕胎や間引きは人口と資源の不均衡がもたらす破局を事前に避けて、一定の水準を維持しようとする行動で、それが結果的に日本の前近代経済成長を助けたというのである。現代から見ると極めて残酷な話に思えるが、そう簡単に断罪できないのが人口問題の難しいところだ。
 たとえば「人口は多ければ多いほどよく、国の武器となる」という毛沢東の考えを推し進めた中国は、農業危機とも相まって1960年代に危機的状況に陥り、その後一人っ子政策への転換を余儀なくされた。しかも、この一人っ子政策が新たに引き起こした問題も多いのだ。
『中国 人口超大国のゆくえ』(若林敬子著、岩波新書)は中国の一人っ子政策が実施された経緯と、それに伴う急速な高齢化と扶養制度の揺らぎなど、国家の根幹を揺るがしかねない問題点について述べている。
ウインドウを閉じる
<< PAGE TOP