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プライバシー
何ものにも替えがたい権利であるかのように語られる「プライバシー」。定期券、預金通帳、病院カルテなどの膨大な量の個人情報が、国、自治体、銀行、信販会社などに蓄積されている。プライバシーとはなにかを考える。
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読書ガイド
 平成15年、紆余曲折をへて「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」が成立した。この法律で言う個人情報とは「生存する個人に関する情報であって(略)氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」である。また「個人情報を含む情報」を「個人データ」と呼び、政府や地方公共団体、個人情報取扱事業者にその保護を義務づけた。
 この法律の是非はいまだ議論されているところであるが、実は日本は、個人情報保護の明確な制度については世界的後進国だ。この法律がさす個人情報のみならず、たとえば顔写真などの肖像や、個人がいつどこにいたかなどの行動情報も含めた「個人についての情報」をどう取り扱うのか。世界各国や国際機関などでは1950年代から議論され制度が整備されてきている。
 情報化の進展や社会の複雑化に伴って、様々な情報の取得、蓄積、検索、流通が加速している。当然「個人についての情報」もおなじことだ。それまでは「私生活、私的な時間や空間」と考えられていたプライバシーも、現代では「個人についてのさまざまな情報をその個人自身がコントロールする権利」というように考える必要がでてきたのだ。勝手に写真をとられたり、私生活を暴露されるだけではなく、自身が知らぬ間に住所や電話、銀行口座、信用情報、趣味や思想信条などの情報が取得され利用されている状況もまた、プライバシーの侵害と考えられるのである。
 こうした法整備の国際的な動きにも詳しい堀部政男は、日本でこの取り組みが遅いのは、侵害される側・侵害する側ともに個人情報の重要性について意識がない国民だからだと指摘する。何が個人の権利で何がそうでないか、基準が不明確なこともまた、大きな問題だともいう。戦後日本の公的部門、民間部門の個人情報保護制度の状況をつぶさにおいかけると、一部に非常に敏感な権利意識をもつ層があるものの、多くは意識が希薄だという構造がみえる。今後さらに進展する情報化社会の中で、国際基準に相当するモノサシが必要だろうと『プライバシーと高度情報化社会』(堀部政男著、岩波新書)では詳しく述べている。
 いまや現実には公的機関・民間によるプライバシーの侵害は、かなり進んでいるのだともいえる。一見、行政の効率化ともみえる住基ネット、犯罪防止のための警察記録や、クレジット情報・ダイレクトメール情報などなど、本人の意図しないところで個人情報は活用されているという。『プライバシー・クライシス』(斎藤貴男著、文春新書)では、住基ネットの考え方の一つの原型となった「国民総背番号制」に潜む個人情報の国家管理の危険性や問題点が丹念に指摘されている。また『日本の公安警察』(青木理著、講談社現代新書)でも、あまり知ることのない警察の公安機構の取材を通じて国家による個人情報取得・管理の一端とその問題性を考えることができる。確かに平和で治安が維持された社会は理想的にも思えるが、反面、個人の自由や権利が阻害されることも意識しなくてはならないだろう。
『プライバシー・クライシス』では、さらに名簿業者の実態や、ダイレクトマーケティングという名の下にどのように個人情報が流通しているのかについても細かく取材されている。子どもの入学時期にタイミングよく学用品のDMが来る、なぜか自分の趣味によくあった案内電話がよくかかる、などの裏側・仕組みがよくわかるだろう。これを便利な社会だと考えるか、個人情報の意図しない使い方だと憂慮するかは意見のわかれるところだが、利便は危険を伴うことを意識しておきたい。
 また近年はパソコンなどの普及でDTPやホームページ作成など、個人が「情報発信者」となることも多い。その段階で知らず知らずのうちに他者の権利やプライバシーを侵害する場合も多い。『知っておきたい情報モラル Q&A』(久保田裕、佐藤英雄著、岩波アクティブ新書)はネットの掲示板でのトラブル、ホームページにのせた写真の問題などのケーススタディである。著作権やプライバシー権は、もはや個人個人で意識し、考えなければならない時代になったのだともいえよう。
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