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テロ
ハイジャック、爆弾テロ…。9・11以来、憎悪の対象となっているテロリズム。恐怖で人の心を支配するといわれ、また弱者の最終戦術ともいわれるテロとはいったい何なのか。冷戦後、規模も手段も過激化し、世界観の対立の表現となっているテロを考察する。
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読書ガイド
「テロとの戦い」「テロに負けない」――こうした言葉を日常的に見聞きするが、テロが具体的にどんな行為を指すのか、明快に答えることができるだろうか。「戦争の世紀」と言われた20世紀が終わった今、世界は新たな脅威と向き合っている。歴史を振り返り、テロの背景や現状を把握することで、確実に見えてくるものがありそうだ。
『テロ後/世界はどう変わったか』(藤原帰一編、岩波新書)は、専門分野や国籍の異なる12人が、2001年9月11日の同時多発テロ以後の世界を鋭く見据えている。テロという概念に、国際的に合意された明確な定義はない。国際政治学者の坂本義和は、「同時多発テロ」という誰もが許せない特定のテロへの反対が、テロ一般への反対に拡張されたことを強く批判する。現代アラブ文学者の岡真理は、アフガニスタンやパレスチナの受けた爆撃や殺戮が9・11ほど鮮明に記憶されていないのは、私たちの無知や無関心のためだと悲しみを込めて指摘。「テロリスト」とまとめて呼ぶことで、彼らが銃をとるに至った背景にある現実を忘れてはならないと訴える。作家ウンベルト・エーコ、新聞社の米国特派員、社会学者ら多彩な著者の文章によって、複雑に入り組んだ世界の実情が立体的に迫ってくる。
 9・11があまりにも強烈な出来事だったので、「テロ=イスラム」という連想が働きがちだが、そもそもテロリズムとは、いつごろから発生し今に至るのだろうか。
『テロ/現代暴力論』(加藤朗著、中公新書)は、近代主権国民国家との関連でテロをとらえることを基本とし、過去から未来までを丹念に読み解く。国際政治学や紛争・平和研究を専門とする著者は、航空交通と通信の発達によってテロが国際化したことから、1968年のイスラエル機ハイジャック事件を「現代テロの始まり」と位置づける。そして、イスラム・テロの勃興、冷戦後のポストモダン・テロを経て、今後のテロについて分析。核テロ、サイバー・テロといった技術的なことも網羅しており、構成がしっかりしている。
『日本はテロを防げるか』(宮坂直史著、ちくま新書)は、日本の戦後史やテロ対策にポイントを置く。テロの定義について、①学術上②政府機関③国際協定上④各国の反テロ法――と、目的が違えば内容も異なると指摘し、日本がそれぞれどう定義しているか政策や外交を問う最終章は、テロ対策特別措置法などについて考える際、必読だろう。イギリスやドイツなどのテロ対策と比較するとき、日本の危機意識がまだまだ低いことが明らかにされる。近代以降、攘夷運動の吹き荒れた幕末から今日に至るまで、「一時たりとも日本がテロリズムと無縁であった時期はなかった」という著者の指摘はシビアだ。日本のテロ対策を変えたオウム真理教を巡る事件、9・11後の日本国内の動きなどについても、よくまとめられている。
「テロ」は、「犯罪」でなく「戦争」の一形態である、という主張に基づくのは、『テロリズムとは何か』(佐渡龍己著、文春新書)。著者は、陸上自衛隊の教官を務めた経験もあり、リスク・マネジメント、危機管理を専門とする。「テロリズム」という言葉の起源がフランス革命にあることから、国家支援テロリズムと宗教テロリズムが90年代の主流になっていることまでたどったうえで、テロリストの戦略や兵法を解説。9・11以前に書かれており、最も詳しく触れられているのは在ペルー日本大使公邸占拠事件だが、経済援助の見直しや企業の安全対策への具体的な提言、「テロリズムは人の心が戦場となる」という指摘は古びていない。
 中東地域研究者たちによる『「対テロ戦争」とイスラム世界』(板垣雄三編、岩波新書)は、イラクなど湾岸諸国に加え、パレスチナやアフリカ、中央ユーラシアなどイスラム世界全域に目を向ける一冊。メディアが安易に「イスラム原理主義者」「イスラム過激派」と呼ぶテロリストらが必ずしもイスラム主義者ではないこと、ソ連解体によって再イスラム化した中央ユーラシアの政情不安などが、幅広く取り上げられている。ある国家が何らかの政治的暴力に対して「テロリズム」と断じれば、あらゆる手段を講じて弾圧できるようになった今、報復の限定戦争を繰り返さないためには、「まず『テロリズム』という言葉を使うことを止め、あらゆる政治的暴力を批判し、共通の法規範を確認し合う努力をすること」が唯一の道だと黒木英充は指摘している。
『国際テロネットワーク/アルカイダに狙われた東南アジア』(竹田いさみ著、講談社現代新書)は、9・11に関わった国際テロ組織「アルカイダ」の誕生から現在に至るまでを追い、東南アジアとの深い関係を丹念に追う。90年代にフィリピンが拠点とされ、資金や物資の調達、工作員のリクルート、武器の供給が進められる様子がリアルに描かれている。国際テロネットワークの根絶には、さまざまなレベルでの取り組みが必要だと考えさせられる。
『あなたも狙われるかもしれない「見えないテロ」の恐怖』(NBCR対策推進機構著、講談社+α新書)は、N(核)、B(生物)、C(化学)、R(放射能)という4種類の兵器を用いたテロ行為の可能性を解説。執筆陣は、この4種の兵器の軍事的使用やテロ行為による災害を防止することを目的に設立されたNPOのメンバーだ。個々の兵器の危険性や使用例がわかりやく解説されている。テロ対策の基本は「自分たちの身は自分たちで守る」感覚であり、ちょっとした異変に気づく注意力や、パニックに陥らない落ち着きが必要と説く。
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