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豊臣秀吉
本能寺の変後、天下を統一した豊臣秀吉の生涯、その功罪、茶道や能に親しんだ素顔など、様々な角度から解説する。
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読書ガイド
 日本人に最も人気のある戦国武将は、なんといっても豊臣秀吉であろう。百姓から立身出世を遂げた庶民性豊かな天下人と伝えられる太閤の伝記は、小説やドラマの題材として好まれ、出世譚好きの日本人に愛され続けている。が、人気者の常として、その出自や手柄話、苦労話には尾ひれがついたり、創作が施されたりしていて、その実像は巷間に知られている姿とは随分異なるのだそうだ。では、秀吉とはどのような人物で、本当は何をして何をしなかったのか。歴史学者たちが、様々な角度から秀吉像に迫る。
『豊臣秀吉』(小和田哲男著、中公新書)は、「虚構を離れ、確かな資料をもとにして、秀吉の一生を追跡調査」する。著者は太閤人気の要因を、陽気な庶民性と立身出世、豊臣氏滅亡による判官贔屓と分析した上で、太閤人気は後世の様々な「太閤記」によって創作された英雄像をもとに、江戸・明治期に醸成された現象と断じる。江戸時代には徳川治世に対する反発が秀吉人気を生み、明治期には朝鮮出兵を敢行した武将として国家的に祭り上げられたのだという。秀吉が、確かな資料に登場するのは28歳の時で、それ以前の秀吉の歩みは、様々に伝えられているものの、真相は藪の中である。著者は、太閤記では定番となっている、清洲城割普請(重臣にできなかった城壁の修繕を短期間で敢行)や薪奉行としての活躍(薪を節約)、さらには美濃攻めの橋頭堡となった墨俣城築城などを後世の創作と推測し、天下人となってからも、法や年貢の取立ての厳しさで、庶民から人気がなかった姿を描いている。
『黄金太閤 : 夢を演じた天下びと』(山室恭子著、中公新書)は、情報戦略を切り口に秀吉の後半生を描いた逸品である。黄金の聚楽第や千成瓢箪の馬印など派手好きで知られる秀吉だが、それは伊達や酔狂ではなく、歴とした情報戦略の一環だった、というのである。情報戦という光を照射してその足跡をたどると、豪華絢爛に包まれて隠れていた知略家秀吉の表情が浮かび上がってくる。たとえば、柴田勝家と雌雄を決した賤ヶ岳の戦いの伝説となっている七本槍を、秀吉によるマッチポンプと著者はみる。秀吉は戦いの様子を書状に認め諸大名に送りつけているのだが、その文面はどれもほぼ同じで、サンプルが用意されていたとしか考えられず、小性たちの勇猛果敢ぶりを喧伝する情報戦だったという。
 佐々成政を標的にした北国攻めでは、成政が降伏を申し入れていたにもかかわらず、大軍を率いて遠征し、一戦も交えることなく城を無血開城させたうえ、成政には越中の一部をそのまま安堵させている。これは、天下に自分の存在をアピールするためのパレードであった。九州動座にせよ、小田原攻めにせよ、はたまた、花見の宴から豪華絢爛の建物の造営まで、秀吉の所行の一々には情報戦略の一面が隠されている、と著者は読むのである。
 では、朝鮮侵略の意味はなんだったのか。著者は諸将へ知行を与えるための拡張策との通説を排し、歴史にその名を残すための情報戦略だったと推測する。明や朝鮮半島の領有が目的だったのではなく、大陸に進出した最初の武将であったという名を残すための派兵だったのではなかったか、と。
『秀吉の経済感覚 : 経済を武器とした天下人』(脇田修著、中公新書)は、経済人として秀吉を再評価し、秀吉の経済政策を解説する。とくに、商品経済をたくみに治世に取り入れた姿を描写している。城攻めを得意とした秀吉は戦闘そのものに経済機能を利用したと、著者は指摘している。鳥取城攻めでは前年から商人を使って米を買占め、備蓄米を失った鳥取城を兵糧攻めにしているのだが、秀吉は若狭の商人が飢饉のため買い付けに来たと嘘の情報を流し、高値で米を買い付けさせたため、かなりの侍までが備蓄米を売ってしまったのだという。また、関所を廃止し、楽座令を発布して流通革命を起こしたのも秀吉だった。
『秀吉と文禄の役 : フロイス「日本史」より』(フロイス著 ; 松田毅一, 川崎桃太編訳、中公新書)は、戦国時代の日本を記録した宣教師ルイス・フロイスの大著『日本史』第3部からの抄訳。『茶人豊臣秀吉』(矢部良明著、角川選書)は、秀吉の茶人としての実像と、千利休を超えて、秀吉が茶道界に絶大な影響力を及ぼしていく姿を描く。
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