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アメリカの権力構造
政治、経済、軍事面で強大な力を有するアメリカ。その国家としての力を支える権力の構造について。経済界・資本、軍事シンクタンク、大統領、議会、政党の力とは。民主主義をゆがめる構造、帝国化を批判的に検証する。
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読書ガイド
 9・11以降にブッシュ政権が押し進めてきた覇権主義的政策に世界は不快感を隠さないが、アメリカ国内の権力構造はいかに変容しつつあるのだろうか。
 アメリカ政治の構造と力学を、「政党」「議会」「ロビイスト」「大統領」「ホワイトハウス・スタッフ」と項目を整理して探ったのが『アメリカのパワー・エリート』(三輪裕範著、ちくま新書)。日本のメディアは、政党や閣僚の動向だけに注目しがちだが、アメリカの権力構造は複雑に入り組んでいる。政党が弱体化する一方、議員のアトム化が進み、その議員を取りこもうとロビイストの各プロ集団が猛烈な活動を展開する。強力な圧力団体として代表的なのが、全米ライフル協会とイスラエル・ロビーのAIPACだ。ニューディール以降には議会優位から大統領優位へと変化したが、近年は主席補佐官や大統領顧問などの権限が増大していることなど、ワシントンのパワーゲームの変容が語られる。同書の著者は商社系研究所室長だが、ブッシュ政権の論理と政治力学を追った『アメリカの論理』(吉崎達彦著、新潮新書)の著者も商社系シンクタンクの主任エコノミストであり、最近のアメリカ論の論者も多様化している点がうかがえる。
『ブッシュのアメリカ』(三浦俊章著、岩波新書)は、9・11をはさんで2年あまり新聞社特派員としてワシントンに滞在した著者の、身近で取材したブッシュ政権の観察と分析。ブッシュの生い立ちや南部の保守化、同時多発テロの対応ぶり、ホワイトハウス内で開かれている聖書研究会のエピソード、ネオコンの面々、パウエルやライスなど側近のプロフィール、イラク戦争への道のりと、取材記者らしい筆致で読みやすい。ブッシュ政権の周辺を知る一冊目として最適だろう。
 権力と切っても切れないのがカネの問題だが、『アメリカの保守本流』(広瀬隆著、集英社新書)は、ブッシュ政権に食い込んだネオコン・グループを支える金と権力の流れを追う。ユダヤ系で占められているネオコンだが、ここにパレスチナ・イスラエルの根深い国際政治問題がからんでくる。著者は、アメリカの中東地域における石油利権という考えを退け、19世紀から形成されてきた鉄道と石炭資本の財閥構造に目を向ける。インターネット時代を支える電力資源の大半はじつは石油でも原子力でもなく、今だに石炭である。鉄道利権は光ファイバーケーブルに直結している。これら財閥にも金融機関にもユダヤ系人脈が張り巡らされている、と著者は閨閥関係を分析していく。保守本流の金融機関が合併・買収により"ロスチャイルド化現象"を起こし、それが政治家の資金源と天下り先を用意し、潤沢な予算のシンクタンクが軍事思想をばらまき、学術やメディアも影響下に置く……読んでいると暗澹たる思いになってくるが、これはユダヤ陰謀云々レベルの話ではなく、アメリカ政治経済の厳然たる現実の一部であろう。
 最近は「アメリカ帝国」論が盛んだが、『新「帝国」アメリカを解剖する』(佐伯啓思著、ちくま新書)ではまず、フクヤマの『歴史の終焉』とハンチントンの『文明の衝突』を取り上げて比較、今や文明と野蛮の対立ではなく「文明と文化の衝突」の様相を帯びて来たとする。文明の名のもとに自己理念の普遍性を説くアメリカには、世界から反発が集まっている。90年代アメリカは<ネオ・リアリズム><ネオ・リベラリズム><グローバリズム>の三つの思想基軸によって再覇権化を押し進めてきたが、9・11テロはそれに大きな打撃を与えたにもかかわらず、アメリカはその現実を認識しない。それが世界を著しく不安定化していく要因となる。文明の内に巣食う「野蛮」とは近代西洋のニヒリズムに他ならず、「アメリカニズム」と「テロリズム」は双児の関係にあり、「文明」が「帝国」を作ったとしてもニヒリズムという「野蛮」は排除できない、と著者は指摘する。世界的視野から、今のアメリカ権力構造を見つめた書。
 アメリカ政治の二大思潮、保守とリベラルの対立を考察したのが『アメリカの保守とリベラル』(佐々木毅著、講談社学術文庫)。保守グループとひとくちにいっても、その中身は東部エスタブリッシュメントから、レーガンに代表されるオールドライト、キリスト教を基盤としたニューライト、そしてイデオロギー論戦の主流を形成してきた新保守主義(ネオコン)まで各派があり、その全体像と流れがよく分かる一冊になっている。
 最近はすっかり影をひそめた、かつてのエリート集団WASP(アングロサクソン系白人のプロテスタント)だが、『ワスプ(WASP)』(越智道雄著、中公新書)は彼らのライフスタイルや心理を紹介。感情を表に出さない<恥の文化>や、子女教育のプレップ・スクールの歴史と実態、男性の排他的クラブ文化、他民族集団からの羨望の目線など、改めて知る興味深い話が満載だ。
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