2002年1月1日、ヨーロッパに新しい通貨「ユーロ」が生まれた。(正確には1999年にユーロは誕生しているが、主に銀行と大企業だけが利用する銀行口座振替用の「帳簿貨幣」に過ぎなかった)。ユーロ紙幣とコイン、つまりユーロ現金の登場により、ヨーロッパ市民だけでなく、世界の人々が新しい通貨の誕生を実感することになった。
では、その「ユーロ」とは何か? 一般に知られているのは、ヨーロッパの12カ国で共通に流通している通貨である、ということぐらいである。これまで原則として、通貨というのは一つの国に一つあるものだと思われていた。ところが、フランス、ドイツ、イタリアなどは、これまでのフランやマルク、リラと惜別し、共通して使うユーロを創出した。
それはいったいなぜなのか? それによってどんなメリットがあるのか? あるいは不都合があるのか? 世界経済に及ぼす影響は?--といった疑問点が浮かんでくる。
『ユーロ:その衝撃とゆくえ』(田中素香著、岩波新書)は、ユーロ理解のために書かれた入門書である。が、経済について何も知らない人が読んでも分かるようには書かれていない。著者は、世界経済や金融システムについてある程度の知識を前提として、ユーロ登場の経緯、ユーロ流通制度の仕組みなどを解説しつつ、金融グローバリズムのもとでのユーロの課題や政治的通貨としてのユーロの課題を論じ、ユーロのゆくえを展望している。
著者のスタンスは、ユーロを過大評価も過小評価もしない、ということに尽きる。
ユーロ誕生の契機は、二度の欧州大戦であったことはよく知られている。三度ヨーロッパを戦場としないという願いが、多くの困難を払拭してユーロを誕生させた原動力だった。『ユーロの野望』(横山三四郎著、文春新書)は、その経緯を、古代ローマ時代まで遡り、そこからEUと欧州統合、単一市場の誕生と順を追い、ジャーナリストの視点でドラマチックに描いている。タイトルが示すとおり、著者はユーロを世界経済に試練を与える「スーパー通貨」と評価し、その日本への影響も論じている。
一方、ユーロが抱える様々な矛盾や問題点などを浮き彫りにしているのが『ユーロランドの経済学:政治の思惑・通貨の力学』(浜矩子著、PHP新書)である。タイトルにある「ユーロランド」とは、通貨問題のテーマパークといった意味合いであり、課題山積のユーロを過大評価せず、斜めから見てみようという著者のスタンスの現われでもある。一つの通貨に12の政府と12の財政、税制がある矛盾、大国イギリスの不参加、貧しい隣人東欧諸国のユーロ参加など、数多くの課題を具体的に示している。
ユーロ誕生以前に書かれた『通貨の興亡:ドル時代の終焉』(高橋乗宣著、PHP新書)は英ポンド、米ドルと移って来た基軸通貨の興亡という観点からユーロの登場を解説、『ユーロ経済を読む』(新田俊三著、講談社現代新書)は、ユーロ誕生の経緯に加え、ユーロ後のヨーロッパ社会とアジアや日本への影響を予測、『ユーロは世界を変える』(相沢幸悦、平凡社新書)は最終章で「ヨーロッパ連邦」成立の可能性について考察している。
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