世界には古今東西の珠玉のような名言が数多く残されている。名言は人生を楽しみと喜びで満たしてくれるだけではなく、困難に直面したときに、解決の道を示唆してくれることさえ少なくない。名言に親しむことは人生に宝を得ることである、とも言える。
『世界ことわざ名言辞典』(モーリス・マルー編、田辺場貞之助監修、島津智編訳、講談社学術文庫)は、世界各国あらゆる時代のことわざ・名言の類を約一万収録した「辞典」と呼ぶにふさわしい力作である。聖書や古代の文献をはじめ、ヨーロッパ、アメリカ、日本、中国、インド、さらには中近東からアフリカ、今はなくなってしまった古の国々から名前もあまり知られていない国や民族に至るまで、諸家の名言や格言、ことわざを網羅し集大成している。「愛」「裁く」「死の恐怖」といった具合に数千に及ぶ項目に分類、出典をあきらかにし、おもな故事には詳細な解説が施されている。
『日本の名句・名言』(増原良彦著、講談社現代新書)は、文字通り、日本人の残した言葉を集めた名言集である。「一期は夢よ、ただ狂へ」「仏も昔はひとなりき、我等も終には仏なり」「寄らば大樹の陰」「和を以て貴しとなす」などなど、比較的よく知られた名句・名言が、出典や名句の生まれた背景、名言を残した人物像などの解説を交えて紹介される。
が、決して、名句・名言を網羅しただけの辞書的な書物ではない。紹介する名言の数は厳選されていて、しかも、「いかにも日本人らしい」「外国人の口からはきけそうにない」言葉が集められている。つまり、名言を集めながら一つの「日本人論」にもなる、という仕掛けの読み物となっている。
日本の文化にもっとも大きな影響を与え、かつては日本人の教養の必須であった中国の名言を集めたのは『中国名言紀行 : 中原の大地と人語』(堀内正範著、文春新書)である。
「愚公移山、子々孫々」と言ったと伝えられる北山愚公ら伝説上の人物の言葉に始まり、「周の粟を食らわず」と餓死を選んだ伯夷・叔斉の二賢、「大器晩成」の老子、「東門に人あり」の孔子、さらには、荘子、孟子、項羽、劉邦、曹操、諸葛孔明、杜甫、李白、白居易から、周恩来、毛沢東に至るまで、中国の賢人、武将、詩人、哲学者、政治家らの言葉を、その言葉が語られた現場に足を運んで、噛み締めた読み応えのある紀行だ。
「名言」といえばシェイクスピアである。『シェイクスピア劇の名台詞』(P.ミルワード著、安西徹雄訳、講談社学術文庫)は、その大劇作家の名台詞を集めている。台詞を羅列するのではなく、その台詞が語られる劇の文脈をたどり解説を加えてある。読み進むうちにシェイクスピアその人の人生観やイギリス的なものの見方、考え方が明らかとなっていく。
もう一つの名言の泉は「聖書」である。旧約の名言は『旧約聖書名言集』(名尾耕作著、講談社学術文庫)、新約のそれは『新約聖書名言集』(小嶋潤著、同)に詳しい。
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