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靖国神社
現職首相の靖国参拝が慣行化し近隣諸国から非難をあびている。靖国神社参拝の何が問題なのか、戦後日本が政教分離や戦争責任の問題にどう向き合ったのかなど、靖国神社問題を考える。
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 一宗教法人にすぎない靖国神社に、近年は現職総理大臣や国会議員が大挙して参拝に訪れる。新憲法制定後、政教分離は憲法に明確に規定されているにもかかわらず、これを無視した形で、戦後の総理大臣は私的な資格での参拝として既成事実をつみあげてきた。靖国神社国家護持を求める動きも執拗に繰り返されている。靖国神社問題とは何か。
『慰霊と招魂』(村上重良著、岩波新書)で、著者は靖国神社や護国神社が天皇崇拝と軍国主義の普及・強制に大きな役割を果していった過程を、幕末維新から太平洋戦争をへて、現在に至るまで、歴史的に詳述する。「靖国神社の思想は、幕末維新の政争のなかで生まれた国事殉難者の招魂の思想に発している。招魂の思想は、あらゆる価値を天皇に一元化する近代天皇制の成立とともに、天皇のために忠死した戦没者を神として祀り顕彰する靖国の思想に展開した」「靖国神社、護国神社は、明治維新から太平洋戦争の敗戦にいたる七〇余年にわたって、この国を支配した近代天皇制の全構造を、あますところなく反映する宗教施設であり、それをつらぬく原理は、国体の教義、すなわち天皇への忠誠と死を、すべての国民のあらゆる行為の最終的な目標として設定する排外的な集団原理であった」と記す。靖国神社は天皇と軍と神社を直結した特異な宗教施設として、戦争のたびに戦没者を合祀して発展をつづけてきたようだ。近代天皇制国家の支配原理を体現する靖国神社は、国家神道を支える巨大な柱でもあった。戦後、靖国神社法案提出は何度も繰り返されて、その度に廃案になってきた。が、「自民党は、なおも靖国神社国営化に執念を燃やし」、靖国神社国家護持の方向へと確実に進みつつある。同じ著者が靖国神社と関わりの深い国家神道について詳しく解説したのが『国家神道』(村上重良著、岩波新書)。靖国神社を支える根拠である国家神道が、日本国民を支配していた国家宗教であり、国民の思想、宗教、教育など、生活のすみずみにまで影響を与えてきたにもかかわらず、この研究が手薄であることに危機感を抱いた著者が、その実態と役割について研究したもの。「本書は、国家神道とは何か、という問題を、その成立の前提となった神道の歩みを背景として、客観的実証的な立場で追及し解明することを目的としている」とまえがきにあるように、国民には関心が薄く忘れ去られている国家神道の危険な役割を記す。
『靖国神社』(大江志乃夫著、岩波新書)は、国民を「天皇の軍隊」にむすびつける役割をはたしてきた靖国神社の意味を問う。著者の靖国への関心は幼いころに芽生えていた。「靖国の 宮にみ霊は鎮まるも をりをりかへれ 母の夢路に」という短歌がある。この歌は著者の父・大江一二三(陸軍の職業軍人)が部下の戦死を悼み、送った弔電の文面だそうだ。著者はこれに疑問をもつ。「一身を天皇に捧げた戦死者の魂だけでもなぜ遺族のもとにかえしてやれないものか、なぜ死者の魂までも天皇の国家が独占しなければならないのか、ということであった」という。この疑問は靖国問題を研究すればするほど深まったという。本書は靖国神社信仰がどのように作られていったのか、靖国神社・護国神社・忠魂碑の歴史と役割、政治制度としての国家神道とはなにか、戦死者はどのような基準で靖国へ合祀されたのか、合祀とり下げは聞き入れられるのか、各地で争われている靖国違憲訴訟、などを解説。「政府にとって靖国神社が重たい存在であるのは、この神社が明治以来の戦没者を神として祀った神社であるからである。靖国神社の祭神数は、合計二四六万余命にたっするという」とあるが、ここに合祀された人たちの遺族が作る遺族会が政治団体となり、800万票という票田として自民党に圧力をかけている。これが政府を靖国神社国家護持に向かわせるひとつの要因となっているようだ。
 これらに対して、『靖国神社と日本人』(小堀桂一郎著、PHP新書)は靖国神社への思い入れが深い著者が、靖国神社編集発行の「靖国神社百年史」を資料にして書いた靖国神社賛歌。「靖国神社には、戦後民主主義の亡者とは対蹠点に立つ、献身の徳を成就した英霊が神となって鎮まり給う」「およそ我欲というものを放棄し、その放棄の究極の形として、他者のために欣然と我が生命を犠牲にした人々が神として祀られている」などと記されている。靖国神社を擁護する側から描く靖国の歴史。
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