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大人の脳
脳科学に基づき、脳の発達と老化の基本的なしくみを知る。正常な老化とアルツハイマーなどの病気はどう違うのか。現代人の脳の健康に必要な栄養と刺激とは何か。
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読書ガイド
 私の脳は、私そのものなのだろうか――。自分自身のあずかり知らぬところで、脳は身体や意識を統合している。脳のさまざまな働きを知るとき、見知らぬ自分と出会うような面白さがある一方で、脳を病むとき私は私でないのか、と悩んだりもする。
『脳と神経内科』(小長谷正明著、岩波新書)は、そっけないタイトルから想像できないくらい、心躍る科学書である。神経内科医である著者は、まず五感の仕組みを解き明かすのだが、自身の老眼の話から失読症、「歌唱障害」、味盲までが生き生きと解説される。痴呆やテンカンだけでなく、狂犬病や狂牛病などの中枢神経感染症も神経内科のフィールドである。明快な文章で語られるさまざまな臨床経験を読むと、脳の不思議と同時に、未知の病原体や医学上のミステリーにわくわくしてしまう。随所にユーモアたっぷりの逸話があり、楽しみながら脳を知ることができる。
 高齢社会における関心事の一つが、脳の健康だろう。『脳の老化と病気/正常な老化からアルツハイマー病まで』(小川紀雄著、ブルーバックス)は、老年神経病学を専門とする著者が身体と脳の老化、また記憶と痴呆のメカニズムを解説。アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆だけでなく、運動機能障害をもたらすパーキンソン病についても1章を割いて詳しく記しているのが特徴的だ。すべての高齢者が痴呆になるわけではないこと、人間の脳の特性として、生理的老化や軽度の痴呆が始まっても目的意識をもって繰り返し訓練すれば記憶障害の進行は防げることが、納得できる形で示されている。
『アルツハイマー病』(黒田洋一郎著、岩波新書)は、アルツハイマー病について、発見にまつわるエピソードに始まり、どのような病気なのか、診断と早期発見、原因研究や治療、予防の最先端までをバランスよく紹介した好著である。アルツハイマーがよく言われる遺伝病というよりは、生活習慣などさまざまな環境の積み重ねによって発症するものだという見方はうなずける。日本では欧米のように名前を呼びかける習慣がないので、人名の度忘れが多いのではないかという指摘なども愉快だ。アルツハイマーとの関係が疑われているアルミニウムをはじめ化学物質について丁寧に記したあたり、科学者としての良心をうかがわせる。
 痴呆にならないよう脳の健康を保ち鍛えたい、という人には、『脳の健康/頭によいこと、わるいこと』(生田哲著、ブルーバックス)▽『40歳をすぎてからの賢い脳のつくり方』(高田明和著、講談社+α新書)▽『脳が冴える15の習慣/記憶・集中・思考力を高める』(築山節著、生活人新書)が適している。
『脳の健康』は、脳の発生のメカニズムから男女の脳の仕組みの違いまで解説したうえで、脳を育てたり鍛えたりするには、栄養と眠り、適度な運動が最も必要だと説く。妊娠中の女性の栄養やストレスの状態が胎児の脳に与える影響の大きさを知ると、遺伝子よりも環境要因の影響の方が重要だと思わされる。大量のアルコールが脳を萎縮させ、長期間の喫煙が脳の働きを悪くすることなど、もっと喧伝されてよいかもしれない。
『40歳をすぎて〜』は、日常のちょっとした心がけで脳が鍛えられることを懇切丁寧に説いた内容。情報をまとめる能力などは年齢とともに高まり、海馬の脳細胞は70歳を越えても増えるという報告があることなど、希望がもてる事例が挙げられている。脳の働きをよくするには適度なコレステロールや砂糖が不可欠であり、過剰なストレスを避けたり新しいことに挑戦したりするのが大事だと述べる。
『脳が冴える〜』は脳科学を下地に、日常の習慣についてアドバイス。朝から脳を活性化するには、生活のリズムを整え、できるだけ同じ時間に起床し、散歩や部屋の片付けといったウォーミングアップをするのがよいという。「生活のリズムを失うことはボケの入り口」「家事は理想的な脳トレ」「思考の整理は物の整理に表われる」など、すぐに役立つ内容ばかりだ。脳の情報処理という意味では、日々を記録するブログ作成などもいいらしい。
『精神科にできること/脳の医学 心の治療』(野村総一郎著、講談社現代新書)は、精神障害が脳の病気であり、誰にでも起こり得るものだということから始まる。人間の歴史や神話の世界を見ると、精神障害は昔も珍しいものではなく、不利な遺伝子として淘汰されることなく今日まで残っていることは深く考えるべきだと著者は言う。うつ病や統合失調症、摂食障害など典型的な病気がケース・スタディーと共に解説されている。精神障害は遺伝子や精神的な弱さだけが原因ではなく、環境も含め総合的にとらえなければならない病気だということがよくわかる一冊。
『私の脳科学講義』(利根川進著、岩波新書)は、ノーベル賞受賞者、利根川進の自伝としても楽しめる。最初の1章は、免疫学上の大きなミステリーを解いた快挙が語られるが、2章目以降は、記憶のメカニズム解明に取り組むようになった経緯と成果が紹介されている。ところどころに米国育ちの著者の子どもたちのことも出てきて、意外な素顔を見ることができる。
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