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自動車産業
「史上最も複雑な商品」自動車をめぐる闘い。日産自動車が陥った経営の衰退、自動車メーカーの覇権、世界的レベルでの再編などについて。
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読書ガイド
 自動車産業は、世界経済にとって主要な産業であり、日本経済を支える中心的な産業の一つである。日本の自動車産業は、国産技術で生産を始めて以降、集中豪雨的な輸出攻勢で貿易摩擦を生じ、日本の生産方式が世界に注目されたかと思うと、アメリカ企業の巻き返しで日本企業の評価が落ちるなど、さまざまな歴史をたどってきた。また、"車社会"と言われるように、自動車の普及は人類の生活スタイルや社会様式を変え、公害を発生させるというマイナス面も持っている。電気自動車やハイブリッド車、燃料電池の開発が進められているのは地球環境に大きな影響を与えているためだ。自動車に関する出版物には、技術や社会文化、環境、エネルギーなど多様な切り口が見られるが、同じ事象でも見方が著者の視点によって異なるケースもあるので読者としても判断力が必要だ。
『能力構築競争 : 日本の自動車産業はなぜ強いのか』(藤本隆宏著、中公新書)の著者は、バブル崩壊後日本の製造業が没落したと喧伝されたことに反論して、日本の自動車産業が継続して国際的に競争優位に立っていることを強調している。それが成し遂げられたのは、日本の自動車産業のなかで厳しい"能力構築競争"が繰り広げられたからだという。能力構築競争とは著者自身が設定した概念で、もの造りシステムが進化する際、企業が経営の質を高めるために切磋琢磨することをさしている。本書では、日本の自動車企業の歴史を追う中で能力構築競争がどのように展開されたかを分析、今後の予測にまで筆が及んでいる。そして、自動車企業における能力構築競争の歴史から他の産業や領域も学ぶべきだとしている。
『日産自動車の失敗と再生 : 日本人ではなぜ再建できなかったのか』(上杉治郎著、ベスト新書)は、名門・日産がなぜ危機に陥ったのか、なぜ外国人の力によってしか再生できなかったのか、をテーマにしている。著者は、"親方日の丸"的体質だった日産の再生は、思い切った改革を先頭に立って押し進めるゴーンでないと不可能だった、と判断している。日産の問題を日本社会全体の問題と同根であると捉えているようだ。
『自動車合従連衡の世界』(佐藤正明著、文春新書)は1960年代から現代までの日本の自動車会社が関連した合従連衡の歴史を読み物風に記述している。各企業の経営者たちの心の動きや決断の瞬間などをリアルに描いているところは、新聞記者として同時進行取材を積み重ねた成果であろう。
『世界自動車産業の興亡』(下川浩一著、講談社現代新書)は自動車の歴史を、発明から現代の発展途上国の台頭までわかりやすく整理している。
『自動車の危機 : クルマは生き残れるか』(岡崎宏司著、ちくま新書)が取り上げているテーマは、一つは日本車が生き残れるかどうかの危機であり、もう一つは自動車そのものの存在の危機である。著者はクルマの未来を信じ、自動車メーカーに"夢がある新しい価値の創造"を求めている。
『世界自動車産業の興亡』が1992年、『自動車の危機 : クルマは生き残れるか』が1994年の発刊であり、その後の激動を読者側が追加して読むのもおもしろい。
『燃料電池』(槌屋治紀著、ちくま新書)は、自動車産業の構造を変え、環境汚染の問題を解決するとされる燃料電池の仕組みや、燃料電池自動車の開発の歩みなどについて解説している。燃料電池の原料となるのは水素で、著者は「水素エネルギー社会は、これから人間が目指す方向として間違ってはいないようだ」としている。これに対して、『能力構築競争 : 日本の自動車産業はなぜ強いのか』の著者は、燃料電池自動車は材料やエネルギー効率の面で必ずしも優位ではないとして否定的な見解を述べている。同じテーマについて複数の意見に触れ、読者として独自の考えを打ち立てるのも読書の楽しみの一つであろう。
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