テーマで探す新書ガイド 新書マップ BOOK MAP web magazine [ 風 KAZE ]
>>新書マップ検索画面へ戻る
テーマ Theme
テーマ Theme
学力低下問題
子どもの学力は低下しているかどうかの議論。学力低下を招いた要因の追求。大学生の学力の実態。問題の背後にある教育制度や改革について。
関連書籍を探す
読書ガイド
 これまで文部省(現文部科学省)の出した政策をめぐる論争は、常に古典的な二項対立で展開されてきた。すなわち「文部省、自民党、保守、右」vs「日教組、社会党・共産党、革新、左」。イデオロギーの対立が、そのまま学習指導要領の論争に反映されたものである。しかし2002年からの新学習指導要領の是非については、従来とは異なる論陣が展開された。奇妙なねじれ現象すら起こったといってよい。産業界から、「ゆとり」教育を進める文部省に噛みつく声が多数出た。一方で、詰め込み教育を批判する日教組は沈黙を守らざるをえない……。
『論争・学力崩壊』(「中央公論」編集部、中井浩一編、中公新書ラクレ)は、1999年に火がついた「学力低下」論争を読み解く最良のチャートである。噴出した「学力低下」論者の主張、社会学者らによる実社会での学力の位置づけ、教育現場の声と地方公共団体の改革の様子。『中央公論』『文藝春秋』『論座』等で発表された論文がバランス良く掲載され、01年春の出版時点までの論争が一読して把握できる。
「ゆとり」に代表される教育改革を進める文部省と、それを進めれば学力(ひいては国力)が落ちてしまうと主張する側との対立--この構図に捉えられがちだが、実は第三の極があるのだと訴えるのが、『学力低下論争』(市川伸一著、ちくま新書)。著者は、「学力低下は深刻な問題だが、それを打開するためにこそ教育改革路線が重要である」と考える。つまり学力には「学んだ結果としての学力」と「学ぶ力としての学力」があり、後者を向上させるためにも新しいやり方が必要だと説く。
 なるほど『「学力低下」をどうみるか』(尾木直樹著、NHKブックス)や『学力があぶない』(大野晋、上野健爾著、岩波新書)では、子供の学ぶ意欲を引き出すことで学力をつけていく理想的な授業を展開している例が紹介されている。
 しかし一部で成功している方法が、すべての公立小中高校の教師と生徒に当てはまるものだろうか。日本ではタブー視されてきた教育と社会階層との関係を白日の下にさらし出した『大衆教育社会のゆくえ:学歴主義と平等神話の戦後史』(中公新書)を95年に上梓した東京大学大学院教育学研究科の苅谷剛彦教授は、「学力低下」論争勃発後に重要な論者となった。『教育改革の幻想』(ちくま新書)では多くのデータを示しながら、子ども達が受験をさほど苦にしていない事実や、アメリカで「子ども中心主義」の教育が富裕層の子が通う私立校ではうまくいったものの、大衆に展開して失敗に終わった事実等を明らかにする。客観的なデータのないままに、「幻想」をもとにした政策や主張が展開されることに釘を刺す。『なぜ教育論争は不毛なのか:学力論争を超えて』(中公新書ラクレ)でも、日本の教育論争には社会科学の視点が欠けすぎていること、教育を聖域視するがゆえに、中身のない甘美で饒舌なスローガンのもとに思考停止状態に陥ることだけは避けねばならない旨を繰り返し主張する。
 いずれにせよ、大学生にかたっぱしから小中学校レベルの問題を解かせた結果をまとめ上げた『大学生の学力を診断する』(戸瀬信之、西村和雄著、岩波新書)で明らかなように、現在の大学生の学力の低さたるや目を覆うばかり。文科省も「ゆとり」から一転、「確かな学力」に方針を変えた。『論争・学力崩壊2003』(中井浩一編、中公新書ラクレ)は、方針変更前後の論文をまとめ上げたものだ。
『教育崩壊』(産経新聞社会部教育問題取材班編、角川oneテーマ21 )は産経新聞の連載(01年)をまとめ、加筆したもの。行きすぎた「個」の尊重が教育の現場を駄目にしている様が、丹念な取材のもとに暴き出されている。決まりを守らないことを咎められても、個性だから構わないと開き直る親子。個性尊重を理由に指導を怠るままの教師。吐き気をもよおしたくなる醜悪な状況が、公立の小中高校で展開されている。学習指導要領がどう変わろうとも、とても学力がつく環境ではない。イデオロギーを越えた次元で、対策に取り組む必要を考えさせられる。
ウインドウを閉じる
<< PAGE TOP