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格差社会
ほとんどの人が自分は中流であるという意識をもっていた時代は終わり、今や「格差が拡大している」と多くの日本人が感じている。それは経済格差だけにとどまらず、“上流・下流”という言葉に表されるような社会的格差にもわたっている。富裕層と貧困層に二極化していく社会がもつ問題とは。格差や不平等化が進む日本のゆくえを考える。
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読書ガイド
「機会の平等」か、「結果の平等」か――。貧困層と富裕層の格差を巡って、このところ議論百出といった感がある。格差社会を考えることは、戦後のさまざまな政策を振り返り、今後さらに少子・高齢化の進む日本がどんな社会を目指すのかを考えることであろう。
 いくつもの「格差社会」本が出版される火付け役ともなったのが、『下流社会 : 新たな階層集団の出現』(三浦展著、光文社新書)である。マーケティング・アナリストとして、消費や家族などについて幅広く考察してきた著者が、世代ごとの階層意識の変化から、社会全体における中流意識の減少の原因、自分を「下流」と見なす若者の特徴を探ったベストセラー。基となったアンケート調査のサンプル数が少なく、統計学的有意性に乏しいことは著者自身も認めているが、一つの若者論として面白く読める。
「格差」を巡る論争の全体像をつかみたい人には、『論争 格差社会』(文春新書編集部編、文春新書)が手ごろだろう。竹中平蔵、森永卓郎といったエコノミストから文学者の小谷野敦、社会学者の山田昌弘まで、多様な17人の論者が複数の雑誌で語った内容が1冊に収められている。テーマは「希望格差社会の到来」「二極化社会も悪くない」など。中には明らかに偏った意見もあるが、格差社会という問題がいかにさまざまな立場から語られているかを示そうとするのが、編者の意図のようだ。
『格差社会』(橘木俊詔著、岩波新書)は、低所得労働者の増加や新たな貧困層の出現など、いま日本で起きているさまざまな問題を統計データによって検証したうえで、「小さな政府」からの脱却が必要と説く。教育を受ける機会平等が奪われ、低所得の若者が増えれば結局、国としても衰退せざるを得ない。筆者は、公教育を充実させる改革や地域の活性化、社会保障の充実といった「処方箋」を提唱する。
 政策中心に格差社会を考察するのは、『格差社会の結末 : 富裕層の傲慢・貧困層の怠慢』(中野雅至著、ソフトバンク新書)と『「小さな政府」を問いなおす』(岩田規久男著、ちくま新書)。
 前者は、厚生労働省の官僚として14年間勤めた経験のある筆者が、歴代の内閣の改革を踏まえ、小泉改革を多角的に見直している。格差是正策の特徴を比較したものや所得税率の国際比較など図表が充実していてわかりやすい。社会の格差を是正するには、非正社員の労働条件を改善するなどの企業負担を課すこと、他国と比較して低いレベルにある教育予算を引き上げ、授業内容や教員の社会的地位を向上させることが重要だと主張する。
 後者は、高度成長期から1970年代にかけて日本の「大きな政府」を作り上げたのは、田中角栄による「社会主義革命」だったと見るところから始まる。サッチャー改革以降のイギリスの貧困や雇用の状況、スウェーデン型福祉国家の抱える問題も丁寧に分析。サッチャー政権がスウェーデンにならって、失業者に対するカウンセリングや訓練を充実させて雇用を増やそうとしたことなど興味深い。小泉改革の丁寧な検証と今後の政策課題が明快に語られている。
 やや異色の読み物としては、精神科医として知られる著者による『「新中流」の誕生 : ポスト階層分化社会を探る』(和田秀樹著、中公新書ラクレ)。「やる気」「名誉というパワー」「愛社精神」など、統計データからは見えてこないところから格差社会の姿を明らかにする。伝統産業や農業を継ぐ人以外には相続税100パーセントを科す、診療科を特化したナショナルセンターとしての病院を各地に作るなど、人の心理に着目したユニークな提案が魅力的だ。
『しのびよるネオ階級社会 : ”イギリス化”する日本の格差』(林信吾著、平凡社新書)は、10年に渡ってイギリスで生活した筆者の経験を交えつつ、日本の現状が批判されている。日英では学歴、階級といったものがどう違うのか。肌で感じたことから今後の日本を憂う内容だが、ところどころで自著を自賛するなど少々クセがある。
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