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言語学の巨星
言語学に新たな地平を開いた三人の言語学者、ウィトゲンシュタイン、ソシュール、チョムスキーについて学び、言語学の考え方に触れる。
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読書ガイド
 言語学の創始者であるソシュールが明らかにしたように、「言語」や「ことば」といったものは、実体としてあらかじめ存在しているわけではない。私たちが自明のものと思い込んでいる日本語という言語にせよ、単語にせよ、文にせよ、すべてはそれらを研究する言語学者の「視点」によって切り出されたものにすぎない。
 だから、「言語とは何か」「ことばとは何か」という問いを立てることはできないのだ。このような問いが一種の幻想であり、このような問いを可能にする「視点」を明らかにしなければならないとソシュールが喝破したところから、科学としての言語学の歴史が始まった。
 ソシュール理解のためには、まず『20世紀言語学入門』(加賀野井秀一著、講談社現代新書)で、言語学の歴史を概観するとよい。ただし、「言語記号の恣意性」といったソシュールの重要な概念の説明は十分ではないかもしれない。『言語学とは何か』(田中克彦著、岩波新書)は、「あとがき」で「信仰告白」とみずから述べているように、著者の立場・視点が明快であり、読み応えがある。『ソシュール』(ジョナサン・カラー著、岩波現代文庫)は、ソシュールに焦点を合わせて言語学の歴史を再構成し、学問的影響を与えたものとして構造主義と記号学を取り上げている。その記述は、ソシュールの重要概念の理解を助けるだろうし、田中氏の思想を相対化するのに役立つだろう。
 チョムスキーは、近年、その政治的発言が日本ではよく知られるようになったが、言語学の歴史上、ソシュールと並ぶ最重要人物である。その理由を知るためには、『20世紀言語学入門』が役立つ。『言語学とは何か』は、チョムスキーを批判的にとらえる。いずれにせよ、彼の理論は、この30余年間めまぐるしい変貌を遂げてきたので、初学者が概観するのは難しいだろう。
 ソシュール、チョムスキーに代表される科学としての言語学が言語を対象として扱うのに対して、言語哲学は、言語を方法として扱う。言語哲学は、私たちが現在使っている言語をよりよく理解することで哲学の問題が解決(解消)されると考える。その代表的人物がウィトゲンシュタインである。
 ところで、「天才」と形容される哲学者は多いが、ウィトゲンシュタインこそ、哲学者の多くが認める天才であろう。『ウィトゲンシュタインのウィーン』(S.トゥールミン、A.ジャニク著、平凡社ライブリラー)は、彼の生涯と時代背景に焦点が当てられており、天才の一端を知る助けとなる。『ウィトゲンシュタインはこう考えた』(鬼界彰夫著、講談社現代新書)は、手稿ノートにまでさかのぼってウィトゲンシュタインの思索の軌跡をたどった文献学的な労作である。
 ただし、ウィトゲンシュタイン哲学の面白さを知るためには、彼が発見した問題を彼と共に考え抜かなければならない。『ウィトゲンシュタイン入門』(永井均著、ちくま新書)はその試みが成功している。
 なお、ウィトゲンシュタインは、「語の意味はその使用である」というテーゼを残した。科学としての言語学のなかでも、具体的な言語の使用者と記号との関係を扱う語用論・言語行為論には、ウィトゲンシュタイン哲学の影響が強くみられる。言語学説史における語用論の位置づけについては『20世紀言語学入門』が役立つ。
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