12. 住まい
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住まい、住宅
暮らし方や生活の楽しみ方と家との関係、都市や田舎での暮らし方について。日本の住宅と欧米の住宅との比較。家の購入の仕方などについて。
読書ガイド

「住まい」、あるいは「住宅」と一言でいっても、その意味するところは多岐にわたっている。建築物としての住まいや住宅もあれば、暮らし方や文化的な価値や経済的な価値からこれらをとらえる場合もある。

『住まい方の思想』、『住まい方の演出』、『住まい方の実践』(すべて渡辺武信著、中公新書)は、建築家である著者による一連の作品。といっても、単に建築物としての住宅について論じているのではなく、個人の安らぎの場としての住まいのあり方について述べる。住まいのもつ「私性」に注目する著者は、住まいをひとつの小宇宙としてとらえる。「住宅における私性の実現とは、つまり住み手の一人一人が『ここが私の場所だ』と心の底から感じられるような空間をつくりだすことにつきる」と、著者はいう。

こう書くと抽象論のように聞こえるが、そのアプローチは、玄関や食堂、居間といった具体的な住まいの要素に沿っていて、それぞれのもつ意味や心地よい住まい方について触れる。詩人であり、映画評論、ミステリー評論も手がける著者らしく、映画の一場面にある住まいの小道具や仕掛けを例に出しながら、楽しく読ませる。『実践』では、著者自身の住まいを例にとって語る。

『ぼくたちの古民家暮らし』(新田穂高著、宝島社新書)、『選択・定年田舎暮らし』(湯川豊彦著、同)は、文字通り古民家と田舎暮らし実践の記録。自ら進んで肩肘張らずにとにかく自然とともに暮らす人々の姿は共感を覚える。と同時に、こうした暮らし方の手引きにもなっている。

同じような手引きでも、『「競売」マイホーム激安購入術』(夏原武著、宝島社新書)『30年間後悔しないマンション購入術』(櫻井幸雄著、同)は、バブル崩壊以降顕著になった競売物件の一般人の購入の仕方と終の住処としてのマンションの購入にあたってのハウツーをまとめた。

住宅は、文化や経済レベルの指標でもある。この点からして日本の住宅事情が、日本の経済的な発展に比べて著しく見劣りする点について、その原因などをとらえたのが早川和男による『住宅貧乏物語』、『居住福祉』(ともに岩波新書)、『新・日本住宅物語』(朝日選書)である。

著者は、住宅を基本的人権ととらえ、これを阻害する日本の住宅事情を政治、社会、経済的な側面から指摘する。また、住宅先進国の欧米での住宅政策、運動を紹介。『住宅貧乏物語』は1979年に出版されたが、そこで取り上げられているわが国の住宅の「過密・狭小」性、劣悪な住環境、遠距離通勤、弱者に対する配慮に乏しい住宅政策などは、その後も引き続き、日本社会の課題となっている。『居住福祉』は、これをさらに発展させ、阪神・淡路大震災で露呈した住宅問題、福祉、健康と住宅との関係などについて論じている。「住居は福祉の基礎」という考えのもとに、居住福祉確立の方策を探る。

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