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日中関係
国交回復以来、親愛と憎悪の間を大きく揺れ動いてきた日本と中国の関係を歴史の遠近法で検証。日中国交樹立の過程を回顧し、贖罪外交を続ける日本政府・外務省の姿勢を問い直す。中国の現代の再検証。
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読書ガイド
 日中関係は国交回復以来、最悪の状況にあると言われている。そのきっかけとなったのは言うまでもなく、国内外の批判に耳を傾けることなく小泉首相が頑なに続ける、A級戦犯が合祀されている靖国神社への参拝である。
 しかし、小泉首相が(その可能性は非常に小さいと推察できるが)仮に靖国参拝を中止したからといって、日中関係が画期的に改善されるかといえば、事態はそう単純なものでもなさそうである。改革開放路線により急激な経済成長を遂げ、経済先進大国への道をひた走る中国と、バブル経済崩壊後疲弊した経済状況から抜け出せないでいる日本の間には、さまざまな相克と葛藤が渦巻いている。その原因は何か、解決策はあるのか、専門家の見方も実にさまざまであり、それ自体が、この問題の複雑さと解決の困難さを表している。
 この問題について書かれた新書を読んで、非常に興味深く、かつ、事態が絶望的なほど深刻であることを実感させられたのは、日中の専門家の見方が非常にかけ離れていることである。日本の専門家は中国で高まる「反日感情」の原因を、90年代後半からの江沢民政権による愛国反日教育に求める傾向が強いことに対し、中国人の専門家は、それを強く否定し、問題を文化や社会、国民性などについての相互無理解に求める傾向が強い。
 まず、親日派中国人専門家の分析と主張に耳を傾けてみたい。
『日中はなぜわかり合えないのか』(莫邦富著、平凡社新書)は、日本在住20年の中国人ジャーナリストの著。日中関係は「政冷経熱」から「政冷経冷」に向かいつつあると警告し、「日中関係は、これから二〇年間は絶対によくならない」と予測する著者は、日中間の問題の根本は、「日本の政治家や日本人の一部が中国国民の気持ちを理解しようとしていないこと」と「中国国民の多数も日本を自らの目で見る機会がなく、理解しようにも理解するすべがない」ことにあると指摘する。
 著書の前半で、日本のメディアで中国の「反日」報道が実態以上に扇動的に続けられていることや、中国共産党が中国国民を完全にコントロールしているという日本側の幻想を数々の具体例を示しながら冷静に批判した上で、後半では、中国国民の「反日感情」を分析する。著者が重視するのは、中国国民が日常的に接している日本企業やその製品である。三菱自動車がパジェロのブレーキ故障問題で不誠実な対応をしたことや、中国語で入力できない携帯電話を中国市場に投入したメーカーがあったことなどを例にあげ、90年代半ば以降、それまで、映画や日本製品を通して崇拝に近い親近感を持っていた中国国民の日本への敬意が急速に失われていった実態を報告する。
 著者は、中国人にとってより悩まされているのは、靖国の問題ではなく、日本企業の中国に対する姿勢だとし、中国は安価な人件費を供給する現地生産工場との見方から脱却できず、その市場としての可能性や、中国人の消費者としての意識向上を見落としてきた日本企業のあり方こそが、「反日感情」を醸成してきた、と見ている。
『ほんとうは日本に憧れる中国人 : 「反日感情」の深層分析』(王敏著、PHP新書)は、法政大学で日本研究に携わる著者が、80年以降に生まれ改革開放政策を「当たり前のこと」として育った世代の実像に迫ることを通して、中国の若者の日本観にある「憧れ」と「不信」という二重性の要因を探る。
 数々のデータや現象から描かれる中国の若者の実像は、隣国理解のために非常に有意義な報告である。たとえば、「かわいい」が流行語になり、最奥地でも通用しているとか、「人気」や「花嫁」など多くの日本語が“外来語”として中国の若者に使われている。上海ではおでん、たこやき、ラーメンが食べたいものの定番になっている。村上春樹の『ノルウェイの森』がベストセラーになっている——などなどである。さらに、「日本に学ぶ」ことにも熱心で、日本留学はブームとなり、IT企業が集積する大連では、日本語のできるIT技術者はひっぱりだこという状況も報告されている。
 しかし、一方で、若者の間でも日本に対する不信感はまったく払拭されていない。
 その原因を、著者は日中の歴史観の違いに求めている。儒教をアイデンティティとする中国では歴史に学ぶことが身についている。ところが長い歴史をもつ中国では、すべてを詳細に教えられないために必然的に近現代史に重点を置く教育となる。近現代には、アヘン戦争以来、欧州や日本に侵略を受けた歴史があり、日本の侵略についての記述が多くならざるを得ない。これを意図された「反日教育」と評価するのは間違いである。
 また、日本には、しつこいほど感謝はするが謝る時はあっさりとしていて、人の過ちを追及しないという文化がある。中国は、感謝はあっさりしているが、しつこいほど自分の過ちを詫び、その原因を論理的に説明することで謝罪を表現するという文化がある。中国が戦前の侵略についての謝罪をしつこく要求する背景にはこの文化がある。歴代首相が謝罪しながら、閣僚やオピニオン誌が全く反対のことを言い、小泉首相は靖国参拝を繰り返す。中国人の常識からするとそれ以前の謝罪はすべて帳消しとなる。一方、頭を下げることに重要な意味がある日本は、一度謝ったのにしつこく追窮するのは失礼、と考える。そこに、靖国問題の核心があると、著者は指摘している。
『中国はなぜ「反日」になったか』(清水美和著、文春新書)は、長く中国特派員を務めた日本人ジャーナリストの著書である。90年代半ば以降、歴史認識問題が深刻化し、中国メディアで反日的論調が席巻している背景には、冷戦終結以降の日米同盟強化に不信感を強めた中国政府が、政権の求心力を高めるために主導した愛国主義教育があり、開放改革経済の結果として現われた社会の多元化や貧富の格差などに対する中国国民の不満の捌け口に「反日」が利用された一面があるという視点で書かれている。著者は、国交回復交渉以降の日中関係を、おもに、政治家や政府高官による外交交渉を検証することで、日中関係の悪化を政府主導のできごととして説明している。これが現在の日本のジャーナリズムの主流をなす論調であると考えられる。
『「日中友好」という幻想』(中嶋嶺雄著、PHP新書)は、日中国交回復期に政策ブレーンの一員だった中国の専門家である学者の著である。対中国強硬派の立場が貫かれており、日中国交回復を“拙速”と総括し、そのつけにより日本政府が中国政府に対して毅然とした態度をとれないと断じ、国交回復交渉以降の外交政策を細部にわたり検証し厳しく批判する。小泉首相の靖国参拝を支持し、政府外務省を“謝罪外交”と批判する保守派の代表的な論調がここにみられる。
『反日と反中』(横山宏章著、集英社新書)は、中国の対日観と日本の対中観のルーツを長い歴史に辿り、現在の反日と反中を冷静に分析する視点で書かれている。サッカーのアジアカップ、珠海買春事件、西安寸劇騒動の正確な検証により、中国での「反日騒動」がメディアによって現実以上の騒動に作り上げられている実態を明らかにするが、一方で、両国間の相克は、長い歴史の積み重ねによるものであるとの視点から、早急な相互理解は不可能との立場で、危機回復の道筋を探る。
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