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愛国心
戦前の軍国主義と強く結びつけられたため、戦後はタブーとされてきた「愛国心」。愛国心とはどのような心なのか。
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読書ガイド
 愛国心には、自国の国益を追求する「ナショナリズム」と、自国の文化や自然を愛する「パトリオティズム」の2つがある。後者はもともと、生まれ育った共同体や郷土を意味する「パトリア」への愛着を示す言葉であり、近代国家という概念の誕生以前からあった。憲法改正や教育について論議される中、そこで問題にされる「愛国心」が具体的に何を指すのか、きちんと把握しておきたい。
『愛国の作法』(姜尚中著、朝日新書)は、愛国心が声高に叫ばれる背景を分析しつつ、愛国について考察する。在日コリアンとして生きてきた著者は、生まれ育った日本への情愛と、父母の国である韓国への思いとの間で揺れ動いた経験をもち、自然発生的な「郷土愛」が、抽象的な国家という概念に対する「愛国心」と連続することは決してないと明言する。大事なのは、住みよい国土をつくり世界の平和や文化に寄与しようとする国家の理想であり、その理想に忠実であることこそ「愛国」と説く。ハンナ・アーレントをはじめ、南原繁や矢内原忠雄、石橋湛山らの著作からの引用も多く、愛国心についてさらに考えを深めたい人へのよきガイドブックにもなっている。
『教育と国家』(高橋哲哉著、講談社現代新書)は、「愛国心については歴史的な文脈、経緯を踏まえた議論が必要だ」とし、日本での愛国心教育が、明治政府成立時に「忠君愛国」の道徳を教育を通して国民に教えようとしたことに始まる史実を指摘する。そして、若い世代の公共的な事柄への関心を高めようとするのは教育の重要な役割であるが、それを愛国心と結びつける必然性は全くないと言い切る。日の丸・君が代の強制や、道徳心・宗教的情操の涵養などの問題に触れながら、「何を愛するかは個人の自由、最も自由な領域に属するべきこと」だと結論する。国家が公教育という装置を使って愛国心を注入、強制することの危うさを説く文章はやわらかく、論理展開はきわめて明快である。
『誇りを持って戦争から逃げろ!』(中山治著、ちくま新書)は、歴史や国際関係の現状を分析したうえで、憲法第九条を変えようとする動きに対して疑義を唱える。愛国心にはスポーツ観戦時に自然発生するような「応援愛国心」もあるが、いま愛国心教育を巡って論議されているのは、国家のために銃を取り命を捧げる「戦争愛国心」ではないかと問う。そして、「戦争愛国心」には「契約型」と「情緒型」があり、キリスト教における契約の概念が根本にある欧米と異なり、日本の情緒的な愛国心は「無限定」であるため、旧日本軍を玉砕や万歳突撃に追いやった、と指摘する。九条を変えて自衛隊が軍になるのであれば、武装中立することこそ最も戦争に巻き込まれず平和と安全を守れる選択肢だという見方は独特だ。
 ベストセラーになった『国家の品格』(藤原正彦著、新潮新書)は、「祖国愛」の大切さを説く著者の講演録を改めたもの。「愛国心」という言葉には、ナショナリズムとパトリオティズムがないまぜになっており、自分はパトリオティズムに近い「祖国愛」という言葉を使いたいと述べられている。読みやすい半面、「もののあわれ」や「惻隠の情」を強調するなど話がやや情緒的に展開し、なおかつ話題が多方面に及ぶので、読む側が自分で論点を整理する必要がある。武士道精神の復活を説き、「論理を徹底しても問題は解決しない」という批判は歯切れがよいが、論理の展開が乱暴なところも多々見られる。
『良心の自由と子どもたち』(西原博史著、岩波新書)は、教育現場における心の自由という視点から、愛国心教育や宗教・道徳的な教育、性教育の是非を考える。一人ひとりの心の問題に学校が踏み込めば、思想・良心の自由に関わる問題が発生する。著者は「多数決を経て決まった政府の政策を常に支持することが国を愛することだと考える人もいれば、国を愛するためにこそ政府が打ち出す政策をきちんと吟味し、問題あるものには徹底して批判を加えなければならないと考える人もいる」と、国の愛し方が一人ひとり違うことを丁寧に述べている。
『愛国心の探求』(篠沢秀夫著、文春新書)は、フランス文学者である著者が、日仏を比較しながら愛国心について考察したユニークな1冊。フランス革命によって世界で初めて誕生した「国民国家」をモデルに、明治維新の際、国民皆兵や県の制度が作られたという指摘はなかなか鋭い。義務教育や標準語使用の徹底が二国間の意外な共通点であることなど、興味深い点もいくつかあるが、感情的に論が展開されているところも少なくない。
 フランスに関心を抱いた人は、『ジャンヌ・ダルク/愛国心と信仰』(村松剛著、中公新書)を読んでみるのも一興かもしれない。「オルレアンの少女」「百年戦争」「火あぶり」といった断片的なイメージしか持ちにくいが、ジャンヌの人気は今も衰えないという。十二世紀以降の英仏の関係を縦軸に、ジャンヌの生い立ち、史料に残る活躍ぶりが丹念に描かれている。フランス統一を願いつつ異端裁判にかけられ、栄光の高みから火刑台へと追いやられた少女の生涯は、国家とは何かということも考えさせてくれる。
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