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テレビとジャーナリズム
メディアとしてのテレビ、ジャーナリズムとしてのテレビ。番組のあり方、報道の姿勢と番組の制作のされ方。思想的な位置づけ、限界と可能性。メディアリテラシーやアメリカのメディアの実情について。
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読書ガイド
 現代に生きる私たちの価値観やものの考え方は、多かれ少なかれテレビの影響を受けている。それを自覚して視聴することが、メディア・リテラシーの始まりである。メディアが本当に「第四の権力」なのかどうかを含め、押し寄せてくる情報を的確に把握するためにも、テレビという巨大なメディアの歴史や仕組みについて知っておきたい。
 テレビ放送の始まりから現在までを考えるうえで、NHKの存在は大きい。『NHK/問われる公共放送』(松田浩著、岩波新書)は、放送の公共性をポイントに成熟した社会のあり方を問う。NHKが放送の自由と自立が認められている公共放送機関でありながら、予算や事業計画が国会承認を必要とすることなどから、政治の干渉・介入が後を絶たない実態、「国策」の先導役としてデジタル化やハイビジョン普及を進めてきた経緯には考えさせられる。2011年に地上波テレビ放送がアナログからデジタルへ切り替わり、従来のテレビでは視聴できなくなるが、著者は、デジタル受像機の普及が95%を超えた段階でアナログ放送の打ち切り時期を確定するというBBCの姿勢を高く評価する。しかし、NHK批判に終わるのではなく、権力や資本、市場原理から自由な公共放送を、市民が育ててゆかなければ、と力強く提言している。
『NHK問題』(武田徹著、ちくま新書)は、放送の歴史を丹念に追いつつ、放送ジャーナリズムの本質を読み解く。戦後つくられた電波三法下では、独立行政委員会である電波監理委員会を設置して電波資源を公平に分配するという米国流と、受信料収入による運営で政府からの独立を図るという英国流との、米英「二刀流」スタイルで「放送の公共性」を保証しようとしていた。しかしGHQの占領終了と同時に、電波監理委員会が廃止され、米国流の「公共性」は失われてしまう。さらに、同委員会廃止で電波の許認可権が政府(郵政省)に回収されたことで、行政権力から放送は完全に独立しえず、英国流の「公共性」をも危うくなってしまった、という著者の分析は鋭い。強大な検索サイト「グーグル」の限界とジャーナリズムの可能性を指摘したうえで、ネット時代にふさわしい放送のあり方を探る。
 テレビ番組を作る側の視点を盛り込んだ『テレビの教科書/ビジネス構造から制作現場まで』(碓井広義著、PHP新書)を読むと、広告媒体としてのテレビや番組制作費の流れなど、テレビのビジネス構造を知ることができる。視聴率という魔物について詳しく述べられているのも他の本にない特徴で、テレビを見ること自体が消費者として関わることなのだと思い知らされる。ドキュメンタリー番組制作の取材や撮影、演出のノウハウも書かれており、番組を見る目を肥やしてくれそうだ。
 実例を挙げて、テレビを見るときの心構えを正してくれるのは、『テレビ報道の正しい見方』(草野厚著、PHP新書)▽『総理大臣とメディア』(石澤靖治著、文春新書)▽『テレビの罠/コイズミ現象を読みとく』(香山リカ著、ちくま新書)など。
『テレビ報道の正しい見方』は、1999年に起きたトルコ大震災への日本のODA報道を中心に、「初めに批判ありき」の報道の危うさ、取捨選択による一面的報道が批判される。映像メディアの多様化と重要度の高まりの中、テレビを見る側が検証する目をもつことの大切さが力説されている。『総理大臣とメディア』は、ワイドショー化した政治を多面的に検証する。「メディア宰相」と呼ばれた小泉前首相のメディア戦略や、メディアを過剰に意識した米大統領選の実情など、テレビを有効利用しようとする為政者の思惑が見えてくる。政治家との「つかず離れず」の関係が難しい政治記者の実態にも迫る。『テレビの罠』は、コメンテーターとしてもおなじみの精神科医が、自らのテレビ出演の経験も交え、「見る側」を意識して2005年の衆院選を読み解いた。若者の気分やポピュリズムへの時代的傾倒などをすくい取った、ひと味違ったメディア論になっている。
 テレビのみならず、新聞やインターネットを含めた「メディア」の本質に迫るのは、『メディア社会/現代を読み解く視点』(佐藤卓己著、岩波新書)だ。日頃メディアに接していながら気づかない、盲点とも言うべき事柄が鋭く指摘されている。例えば、「終戦記念日」がポツダム宣言受諾の8月14日でも降伏調印の9月2日でもなく、玉音放送が流れた8月15日になった理由をたどると、平和を祈念し、戦没者を悼む日としてこの日が本当にふさわしいのかどうか、深く考えさせられる。「報道写真の読み方」「ニュー・メディアは危険か?」など50項目にわたって分析されており、どこからでも読める。
『メディア・コントロール/正義なき民主主義と国際社会』(ノーム・チョムスキー著・鈴木主税訳、集英社新書)は、注意深く読む必要がある。『生成文法』の名著で知られる言語学者の文章は、時に皮肉に満ち、さりげない修辞がそこここに使われているからだ。中東問題でも国際テロでも、報道されるニュースから欠落しているものに気づかなければならない、と彼は繰り返す。メディアへの失望を隠さない著者は、「火星から来たジャーナリスト」だったら曇りのない目で、「9・11」よりも前に対テロ戦争が宣言されていたことや、80年代以降の各国の共闘関係を伝えるだろうと述べる。
『ジャーナリズムの思想』(原寿雄著、岩波新書)は、メディアの特性や歴史を踏まえたうえで、ジャーナリズムの倫理観や人権思想などを考える。ほとんどのマスメディアは株式会社であり、企業としての商業性とジャーナリズムの公共性を併せ持つ。テレビの場合はさらに、映像に寄りかかり過ぎる「映像至上主義」の弊害や子どもへの影響を考えることが求められる。Vチップ問題や「不偏不党」の真の意味などメディアを巡る諸問題が、バランスよく取り上げられている。
『おしえて!ニュースの問題点』(池上彰著、ちくまプリマー新書)は、NHKの記者、キャスターとして広い分野を取材してきた著者が、時事的な問題を中学生にも分かるように解説した内容。「週刊こどもニュース」のお父さん役の語り口そのままのやわらかな文章は、バランスよく読みやすい。「中国の人民元切り上げとは?」「テロとは何か」などと並び、「NHKは何が問題?」「ケータイでテレビを見る」といったメディア関係の章もあるが、分量的に少ないのがやや残念だ。
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