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東京散策
浅草や上野の下町風情、山手の住宅地、新宿、渋谷、池袋など巨大ダウンタウン。江戸明治大正昭和の歴史が混ざり合う東京。その東京を満喫する。
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読書ガイド
 東京は首都である。そして、町人文化の栄えた江戸という町でもあった。東京の町並みを丹念に歩けば、江戸は今も生き生きとした顔を見せてくれる。散策の達人たちによる道案内を読むことで、いろいろな時代の雰囲気に浸ることができるのは嬉しいことだ。
『江戸を歩く』(田中優子著・石山貴美子写真、集英社新書ヴィジュアル版)は、江戸学者として知られる著者が豊かな知識と想像力をもって、過去を再現する面白みに満ちている。そのリアルさは「幻視」といってもよいほどで、時に怖気を感じさせる。最初の章で取り上げるのが、江戸城でも吉原でもなく、千住小塚原回向院であるところからして一筋縄では行かない。幕府を問い詰めて処刑された吉田松陰らが葬られた場所が、今や複数の線路で分断される回向院なのである。こうした近代の闇を問う一方で、隅田川の水がいかに美しく澄んでいたか、いなせな辰巳芸者がどんな格好で闊歩したかがリアルに語られる。広大な敷地を有する大学や大使館、ホテルはかつての大名屋敷跡に作られていること、「東海道四谷怪談」のお岩の住まい「雑司ケ谷四ツ谷町」は今の新宿区四谷ではないことなど、興味は尽きない。数々の写真の背後に、確かに江戸が見えることにぞくぞくさせられる。
『お江戸週末散歩』(林家こぶ平著、角川oneテーマ21)は、林家正蔵を襲名する前の著者が、落語家ならではのやわらかな語り口で江戸を案内する。「江戸に興じる」と題した章で、各地の祭りや花火、花見、市を取り上げるあたりは真骨頂といえようか。根岸付近の土の色から生まれた「ネギシ色」という言葉が職人の世界で今も生きている、といった興味深いエピソードも。
 少し時代の下った東京を楽しみたい人には、日本近代史としても読める『カラー版 明治・大正を食べ歩く』(森まゆみ著、PHP新書)を薦めたい。地域雑誌「谷中・根津・千駄木」(愛称「谷根千=ヤネセン」)を長らく発行してきた、東京生まれの著者である。その目配りは確かで、しっかりした取材に基づいた老舗の魅力が書き込まれている。「かんだ薮蕎麦」「日比谷松本楼」「銀座ライオン」「中村屋」……ただの食べ歩きガイドブックではなく、町の歴史や人情、菊池寛や高村光太郎ら文学者たちの姿が彷彿されるあたり、読み応えがある。著者自身の幼年時代も回想され、上野動物園のお猿電車やレストランの洋食メニューがあたたかくよみがえる。
 食べ歩きを堪能したければ、『築地で食べる/場内・場外・”裏”築地』(小関敦之著、光文社新書)は懇切丁寧に書かれたガイドブック。築地に幻想を抱いている人は多いが、「築地だからおいしい」ということはない。「キチンと情報を集める」「ケチケチしない」「足繁く通う」といった十ヵ条を守らなければ、本当の美味にはありつけないようだ。江戸時代の築地の話や、牛丼、ラーメンなど寿司以外のおいしい店も紹介されている。
 現代の東京の町並みを知りたい人には、個性の強い『両さんと歩く下町/『こち亀』の扉絵で綴る東京情景』(秋本治著、集英社新書)『東京バスの旅』(中島るみ子・畑中三応子著、文春新書)の2冊が面白い。
『両さんと歩く下町』は、ロングセラーとして知られる人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の作者が、亀有で生まれ育った体験をもとに、下町の変遷をたどる。どのページを開いても、下町の風景が細密に描かれた「こち亀」の扉絵があるのは、ファンならずとも楽しい。
『東京バスの旅』は、都内を走る40のバス路線の魅力が満載されている。写真は少ないが、どの路線にも略図がついていて分りやすい。例えば、築地〜晴海のルートでは、包丁や卵焼き器が買える場外の店について書かれるなど、女性らしい視点が生きている。有吉佐和子之碑や東京オペラシティビルといった、知られざる新名所のある杉並・環七沿いのルートをはじめ、新旧とり交ぜた東京を知る楽しみが味わえる。
 地名にまつわる歴史から東京や江戸に迫るのは、『東京・江戸 地名の由来を歩く』(谷川彰英著、KKベストセラーズ)、『駅名で読む江戸・東京』(大石学著、PHP新書)とその続編(同)の3冊。
『東京・江戸 地名の由来を歩く』は、「坂のある町 東京」「東京の橋を訪ねて」といった章立てが魅力的。水や戦いにちなんだ地名など、単なる歴史エッセイとはひと味違った切り口がある。足を使った取材と研究がうかがわれる、やわらかなタッチ。「亀有」は昔「亀無」だったことや、恵比寿とサッポロビールとの深い関係など、ガイドブックとしても楽しく読める。
『駅名で読む江戸・東京』は、東京、渋谷、巣鴨といった山手線の駅から、都心部の日本橋や六本木、湯島を経て、八王子や青梅街道など多摩地区にまで足を延ばす。序章が「東京における鉄道のあゆみ」であることからも分かるように、あくまでも「駅」を中心に、地名の由来や駅周辺の発達をたっぷりと考察する。続編では、全く同じ章立てで、1冊目では取り上げられなかった駅を収めている。巻末には駅名ごとの参考文献がまとめられており、歴史好きの人に薦めたい。
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