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動物園・水族館
文明開化の世相を背景にした日本における動物園の成立とその歴史、動物園のオリのなかで懸命に生きる動物の姿、そして、近年人気が高まる一方の水族館の実態に迫る。
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読書ガイド
 さまざまな動物を眺めていると、自然界の不思議さや地球環境の多様なことにわくわくさせられる。時には、人間である自分の日常がなんとも奇妙に思えることもある。世界中の水族館や動物園の人気が衰えないのは、こんな効用があるためだろう。日本には、水族館と動物園あわせて100館以上が存在する。せっかく訪れるなら、事前に本を読んで知識を仕入れていくだけで、楽しみが倍増する。もちろん、訪れる時間のない人には、行った気分にさせてくれる本を読むという楽しみ方もある。
『水族館の通になる/年間3千万人を魅了する楽園の謎』(中村元著、祥伝社新書)は、現場で長く働いた著者が幅広く水族館の魅力を解説する。「世界最大の水族館は?」「死んだ魚は食べちゃうの?」「イルカやアシカはどうやってショーを覚えるの?」など、来館者の素朴な疑問に答える形で、水族館の全容が明らかにされてゆく。丈夫で透明度の高いアクリルガラスの技術なしには巨大水槽は実現できなかったこと、また世界中の水族館で使われているアクリルガラスの7割以上を四国の会社が請け負っていることなど、水槽ひとつにもドラマがある。水槽の中に潜ってガラス窓を掃除する苦労や、怖がりのアシカを少しずつ訓練してショーに出られるようにした思い出など、著者の経験がユーモラスにあたたかく書かれているのも楽しい。「水族館に行くなら、朝の開館直後」というアドバイスは必読だ。その理由は、水槽の水の透明度が最も高く、ひと通り見学したころにエサの時間になることも多いから。また動物たちも、ヒトを見るのに飽きていないので愛想がいいとのこと。
『水族館狂時代/おとなを夢中にさせる水の小宇宙』(奥村禎秀著、講談社現代新書)は、水族館らしきものの最初の記述が16世紀に始まることから、パリ万博に代表される水族館ブームまで、世界の歴史を振り返ったうえで日本の状況を追う。世界一のペンギン繁殖の実績をもつ名古屋港水族館、自然光を採り入れた展示構成が美しい「沖縄美ら海水族館」といった、特徴ある各地の水族館について、具体的で生き生きと解説されている。水槽の中にある岩は本物ではなく、セメントやプラスティックを素材とする擬似の岩、擬岩だという。擬岩造形は東京ディズニーランドの建設時にクローズアップされ、今や水族館の擬岩のほとんどを一流の芸術大学出身者が手がけているという話は、水族館文化の豊かさを思わせる。研究、娯楽、繁殖、教育、芸術など多面的な意義を水族館がもつことが納得できる。
 水族館も動物園も、施設ごとに特徴あるテーマを打ち出さなければ、生き残りは難しい。『戦う動物園/旭山動物園と到津の森公園の物語』(小菅正夫・岩野俊郎著、島泰三編、中公新書)の2人の著者は、タイトルにある2つの動物園の園長。パンダブームも去り、全国的に動物園を訪れる人がどんどん減る中、地方の動物園はいずれも苦しい状況にあった。北海道の旭山動物園(旭川市)は、小さな子が動物と触れ合える「こども牧場」など独自のアイディアを生かして、少しずつ来園者を増やしていった。それが、動物の生態を生き生きと見せる行動展示の成功につながり、今は全国各地から来園者の絶えない人気の動物園となったわけだ。九州の到津の森公園(北九州市)も、いったん閉園となる憂き目を見たが、地域住民たちの活動によって劇的な再生を果たした。「動物を知ることは人間を知ること」「動物園は人間にとって必要な施設」と信じる名物園長たちの、熱い気持ちが伝わってくるドキュメント。
『パンダの死体はよみがえる』(遠藤秀紀著、ちくま新書)は、ちょっと異色の動物学の世界を紹介した内容だ。「遺体科学」の研究者を自認する著者は、動物園から動物死亡の一報を受けると、現場に駆けつけては解剖するのを習いとしている。手鉤と刃物を使って巨大な象の死体と格闘するかと思えば、メスとピンセットでレッサーパンダの手の細かな組織を確かめていく。パンダには「第六の指」と呼ばれる骨があり、その骨が親指の代わりをしているという定説が長らく信じられていたが、著者が解剖によってそれを覆すくだりには胸が躍る。動物の死体は研究対象として貴重なものだが、日本では年間数十万円の予算しか充てられておらず、「全人類共有の財産」が生かされていない現状を考えさせられる。
 身近な小動物からパンダやワニなど野生動物まで、幅広く生態を知りたい人には『親子で楽しむ生き物のなぞ/生態・習性の不思議72』(内山裕之編著、講談社ブルーバックス)が適している。「干潟と堤防にいる生き物のなぞ」「野原や雑木林にいる生き物のなぞ」「ペットのなぞ」という具合に、動物の生息するエリアごとにQ&A形式でまとめてあるので読みやすく、アウトドアのレジャーをより楽しむためのハンドブックとしても活用できそうだ。卵胎生のウミタナゴの不思議、魚がよく釣れる時間帯、トラの個体の見分け方、アジやイカの解剖方法など、さまざまなテーマがバランスよく取り上げられている。
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