古代史の正体 : 縄文から平安まで

関裕二著

新潮社, 2021.4, 192p., (新潮新書 ; 902)

ISBN: 9784106109027

所属テーマ
内容

「日本文化の基層は弥生人が作った」「大化改新で悪玉の蘇我氏が成敗された」――。この種の「通説」は旧態依然のまま半世紀前と変わらない。それを乗り越えるためには、考古学の知見を生かした上での、大胆な推理が必要となる。「神武と応神は同一人物」「聖徳太子は蘇我入鹿」「壬申の乱は親蘇我と反蘇我の闘い」など、透徹した目で古代史の真実に迫ってきた筆者のエッセンスを一冊に凝縮した、初めての通史。

目次

はじめに

第1章 弥生時代はなかった?

 文明と進歩を嫌う日本列島人/日本人はどこからやってきたのか/旧石器時代から縄文、弥生へ/「海人」とスンダランド/稲作は縄文時代に始まっている/「強大な権力」の発生を嫌った縄文文化

第2章 考古学で解くヤマト建国――きっかけはタニハ連合

 「邪馬台国」論争にうつつを抜かすな/ヤマト発祥の地に北部九州の痕跡はなかった/銅鐸・石製短剣は「文明に抗う社会装置」か?/ヤマト建国と東海地方の関わり/近江の伊勢から纏向へ丸ごと移動?/見過ごされてきた「タニハ」の重要性/タニハと近江・東海をつなぐ証拠

第3章 神話から解くヤマト建国――神武と応神は同じ人

 『日本書紀』を手掛けたのは藤原不比等/重要地域を完全に無視/天孫降臨の後に向かった「鹿児島県の野間岬」/白旗をあげた北部九州/『日本書紀』で神功皇后の半生を追ってみる/邪馬台国を潰すまで/落ち目だった奴国の役割/敗れた王がなぜヤマトの王に立ったのか

第4章 日本海勢力の王・継体天皇と物部氏の暗闘

 ヤマト政権の二重構造/日本海から出現した蘇我氏/中央集権国家を目指した雄略天皇/応神天皇5世の孫がなぜ担ぎ上げられたのか/「19年の攻防」の本当の意味

第5章 「聖徳太子」は蘇我入鹿である

 乙巳の変への道のり/「改新之詔」を読み直す/大化改新をめぐる学説の変遷/孝徳朝は親蘇我政権/改革後、なぜか活躍しない二人の英雄/山背大兄王一族の墓がない/改革者を大悪人にすり替えた大トリック/法興寺を建てたのは誰か

第6章 壬申の乱は「親蘇我」対「反蘇我」の闘い

 王家を二分した対立の構図/奇跡的勝利を収めた大海人皇子/壬申の乱をめぐる学説の変遷/4つの謎/中大兄皇子は母を人質にした?/やはり無視された「日本海」と「東海」

第7章 『万葉集』は歴史書である

 『万葉集』は文学を超える/額田王の痛快な「紫野行き」の歌/天智は殺意を抱いたか?/『懐風藻』は大津皇子を「長子」と呼ぶ/「石川郎女」は蘇我氏の隠語

第8章 蘇我氏の息の根を止めた黒幕・藤原不比等

 天武と持統の間に横たわる断層/黒幕・藤原不比等登場/高市皇子の死と皇位継承問題の勃発/「石川刀子娘貶黜事件」の重大な意味/「天皇のツルの一声」を温存した藤原氏

第9章 不比等の娘・光明子が「反藤原」だった理由

 計算ずくだった聖武天皇の関東行幸/なぜ反藤原派の天皇に豹変したのか/「不比等の娘」ではなく「県犬養三千代の娘」/最後の天武系・称徳女帝の戦い/藤原氏だけが栄える時代が到来した

第10章 平安時代は平安でも雅でもない

 平安の6大事件/夷をもって夷を制した藤原氏/手柄を藤原氏に横取りされた菅原道真/院政は静かなクーデター/人事の威力に気づいた王家/東国の底力が藤原一党支配を終わらせた?

おわりに

参考文献

4D本棚
テーマリウム
よみもの