28. 心理
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夢分析
人は毎晩、眠りの中でさまざまな夢を見る。仕事の夢、恋人の夢、空を飛ぶ夢…。そもそも人はなぜ夢を見るのか。古代から現代に至る夢の世界の不思議に迫り、夢分析の実例などをもとに、夢の意味するもの、メッセージを解き明かす。
読書ガイド

なぜ人は夢を見るのか、夢は何を意味するのか-という夢の謎については、これまでもさまざまな分野から研究がなされてきた。「夢は無意識への王道だ」と説いた夢解釈の先駆者フロイトや心理学者ユングの研究からはじまって、現代もさらなる夢の解明がクローズアップされている。脳生理学から見た夢の仕組み、心理学、精神分析学から見た夢の解読など、脳を舞台にして繰り広げられる夢との対話は、一体私たちに何を教えてくれるのだろうか。

『夢分析』(新宮一成著、岩波新書)の著者は、夢を見る理由を「忘れていた幼年期の記憶を呼び戻し、自らの存在の根源を再確認すること」と考える。例えば「乳幼児期に初めて言葉を話せるようになることが空飛ぶ夢の源泉である」という。つまり、「新しい人生の段階にさしかかり、その段階にふさわしい言語活動に参入できるかどうかが不安になった時、かつて言葉を話せるようになった時の記憶が呼び戻される。そして、空を飛ぶ夢を見ることで、かつてはできたではないか――と自分に言い聞かせている」というわけである。「夢は無意識の欲望」というフロイトの夢理論を踏まえ、夢がどのような仕組みによって欲望を満たし、夢に出てくる物は何を象徴しているのかなど、数々の実例分析をもとに夢の本質に迫っている。

『夢診断』(秋山さと子著、講談社現代新書)は、ユング研究所に在籍していた著者自身の夢ノートを手掛かりに、ユング独自の夢分析の考えを取り入れながら夢について語る。文学作品などにおける夢診断もあり、興味深い。

文学作品の夢を主に取り上げているのが、「源氏物語」「今昔物語」など古典に出てくる夢を解釈した『「夢」で見る日本人』(江口孝夫著、文春新書)だ。私たちの祖先の夢をはじめ、祖先が夢に対してどう考えていたのか、夢とどう向き合ってきたのかを考察。ひいては日本人の心の奥を探る。また庶民の夢、貴族の夢など時代ごとに取り上げた夢の見方が一風変わっていて面白い。

夢分析を研究した本は専門用語が多く、説明が難しくなりがちだが、『夢の読み方夢の文法』(川嵜克哲著、講談社+α新書)は、夢や心理療法について、現代の身近な問題と関連づけてわかりやすい言葉で表現している。一つの夢を題材にしてフロイトとユングに仮想インタビューをし、著者のフロイト観、ユング観を表すなど切り口はユニーク。本書は「関係性」という視点から夢を考えていく「夢の文法」を提唱しており、人気漫画の主人公の夢を例に親しみやすく解説している。

脳生理学的研究から捉えた夢や眠りの本も多い。『ヒトはなぜ、夢を見るのか』(北浜邦夫著、文春新書)は、魚がするように「身体を不動化させることによって脳を休ませる」ことを眠りの基本とし、両生類、爬虫類、哺乳類の脳の仕組みから人類の進化に眠りが組み込まれていると説明する。また、覚醒と睡眠時に脳で起きていることや、夢の意味を探る。

『夢』(宮城音弥著、岩波新書)は、心理学による夢の解釈と脳波の研究など生理学的研究によって夢みる作用を解明しているロングセラーの一冊。

『夢を見る脳:脳生理学からのアプローチ』(鳥居鎮夫著、中公新書)は、夢を見る睡眠=レム睡眠が発見されて以降の夢の不思議な性質を説明する。夢は何のために見るのか、脳にとってどんな意味があるのかに至るまで、数々の実験結果などから眠りと夢と脳との関係をまとめている。

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